21世紀のロンドンを舞台に、若きシャーロック・ホームズとワトソンが、最新のハイテク技術と類い希れな頭脳で難事件を解決するという、斬新な設定でのドラマで世界中のホームズ探偵ファンを熱狂させた、ホームズを演じるベネディクト・カンバーバッチの人気が沸騰したイギリス・BBCテレビ番組の特別編である。ただし、この作品は原作のように19世紀ビクトリア朝のロンドンが舞台となってホームズの本来のコスチュームで登場することになるが、そこは曲者のBBC!時空を超える変幻自在の流れとなりTVドラマ・ファンの目を楽しませてくれる作品となっている!
19世紀末のイギリス、まだ女性の社会的人権がままならない時代。
ロンドンの街中でウエディング・ドレスを着たひとりの婦人がバルコニーから猟銃を乱射し、その銃口を口に銜えて自殺する怪事件が発生した。
そして、その数時間後、自殺したはずのリコレッティ婦人が、街中の夫であるトーマスの前に現れ、止めに入った警官の前で夫を射殺した。
妻の幽霊から殺された!というこの怪奇現象の事件の相談を受けたシャーロックは、相棒の軍医であったワトソンと、この事件の解決に当たることになる。
モルグに収められた遺体は、確かにリコレッティ婦人に間違いない!
ロンドン中が怯える、この幽霊事件にシャーロックはホームズと共に、緻密な科学的観察眼からくる推理を働かせながら、次第にこの難事件の全貌に迫っていくのだが・・・。
コナン・ドイルの古典的作品の手法と時代を模しながら進むように見せかけ、実は現代版のBBC・TVドラマの次元を巧みに入れ込み操る、一筋縄ではいかないドラマ構成があるので、TVドラマ・ファンにとっては拍手喝采の内容になっているのだが、はじめて映画として「シャーロック」を見ようとして映画館に来た観客は、その錯綜ぶりに戸惑うこと間違いなしの内容となっているのだ!
と言うのは、この作品はアメリカとイギリスでTVで放映された「シャーロック」の特別版を、日本では急遽劇場公開にしたという内幕があるので、TV版のファンにとってはうれしいプレゼントとなったが、純粋に独立した映画版として鑑賞した方にとってはちんぷんかんぷんの内容と思われるのは必至の作品となっているのだ。
だから、もし猛烈に腹が立ったら是非TV版を見てほしい!
そうしたら、この企画の斬新さに改めてファンになってくれるのではないだろうか?
ぼくのチケット代は、2,200円出してもいい作品となっています。
星印は、3つ半差し上げます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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