「猟奇的な彼女」(韓国・2001)「僕の彼女はサイボーグ」(日本・2008)につづくクァク・ジェヨン監督の東アジアを跨ぐ<彼女>シリーズの完結編は中国の<彼女>となる。
韓国ではチョン・ジヒョン、日本では綾瀬はるかという当時フレッシュな女優を起用してきたが、今回は中国四大女優のひとりであるジョウ・シュンという大物女優が楽しそうに破天荒な行動をとる<彼女>を演じている。
大好きな人との幸せな結婚こそ人生最大の目的と考えるチー・ジアは、大学の卒業式の日にウェディング・ドレスを着て出席し、満座の中で恋人のリウにプロポーズする。しかし、リウの返事は「まだ結婚を考えてない」という大ショックな返事。
それから4年、26才になったチー・ジアは、北京に就職したリウと別れて地元でボロボロの精神状態で暮らしていた。そんなチー・ジアを心配しアパートに同居する親友のリン。ある日、体調が思わしくないチー・ジアは病院の医師から若年性更年期障害の診断をされる。深く愛したリウから受けた満座の中の大恥によるトラウマを引きずって生きる深酒などの不規則な生活が影響したのだ。
そんな時、大学の同級生で冴えない男のユアンがふたりのアパートに転がり込んで来る。
リンの猛反対を押し切りチー・ジアは、ユアンの同居を許可し、女ふたりと男ひとりの奇妙な同居生活が始まった。実はユアンは、チー・ジアが大好きで遠くからいつも彼女を見守ってきたのだ。心優しいユアンは、チー・ジアの“最悪の経験”を何とか忘れさせようと懸命に生活改善させる努力をするが、リウへの思いが取れないチー・ジアの心に届かず空回りばかり。そしてある日、リウからの待ち望んだ便りがチー・ジアに届く。が、何とそれは結婚式の招待状だった。ユアンやリンの反対を押し切りチー・ジアは北京へ行く決心をする。チー・ジアをひとりで行かせるわけにはいかない。ユアンとリンは一緒に北京に行くことにする。そしてチー・ジアを心から愛するユアンは、自分の思いを捨て、チー・ジアのためとんでもない計画をチー・ジアとリンに持ちかけるのだが・・・・。
前の彼に対して深い心の悲しみを背負う主人公に、ちょっと冴えないが、その悲しみを癒す男の子が活躍するというセオリーは一緒なので、クァク監督のファンにとって安心して見られる内容となっている。その場合、彼女に振り回されながら誠実な心で彼女を癒す男の子役がキーポイントになるが、韓国でのチャ・テヒョンや、日本の小出恵介に負けじ劣らずのトン・ダーウェイの演技は、大方の観客に支持される秀逸なものとなっているので、飛んでる内容が重しとなり、楽しい作品となっていた!
ぼくのチケット代は、2,100円出してもいいと思う作品でした。
星印は、3つ半差し上げます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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