2015年度のアカデミー賞の作品賞とオリジナル脚本賞の主要部門をダブル受賞した、カトリック聖職者の忌まわしいスキャンダルを、“ボストン・グローブ紙”の記者たちが勇気を持って暴いていくという、実話に基づく出来事を描く社会派ドラマの秀作だ!
2001年、ボストン・グローブ紙にマーク・バロンという新しい編集局長が赴任してきた。
マークは懐疑的な目で見るボストン・グローブ紙の<スポットライト>という硬質の記事を掲載する部門の花形記者4人に、カトリック信者の多いボストンにとって、地元出身の誰もが扱うことを躊躇するカトリック神父による性的虐待事件を詳しく掘り下げ記事にする方針を打ち出してきた。驚愕する4人の記者たち!しかし独自の極秘調査に基づく特集記事欄<スポットライト>を手がけるデスクのウォルターをリーダーとする記者たちは、巷間ボストンで囁かれているひとりの神父の忌まわしい所業について、地道な取材を開始する。その結果、この神父の事件は氷山の一角に過ぎず、取材過程で複数の神父たちの同様の罪を犯している事実に直面することになる。そしてその背後に、それらの神父たちを2~3年毎に教区を変えることや、他国に赴任させて、裏で賠償金を支払うなどしていた教会の隠蔽システムが存在する疑惑にぶち当たる。様々なエリート層に働きかける程強い勢力を持つ教会からの圧力にも負けず、<スポット・ライト>のチームは次々とそれらの疑惑の真実に迫り、2001年の9・11同時多発テロで一時中断を余儀なくされるも、2002年1月ボストン・グローブ紙の一面に、世界を驚愕させる<スポット・ライト>での記事が掲載された。
それを契機に、このような忌まわしい事実が実は世界中にはびこっていた事が次々と暴露されることになっていくのであった・・・。
トム・マッカーシー監督の知的で冷静な演出が、この事実に基づいたドラマを実にスリリングな手法でテンポよく描かれていくので、ぼくら観客も<スポット・ライト>の記者たちに同行取材しているような錯覚を覚え鳥肌が立つ思いで見ることになる作品となっている。様々な圧力に負けず、「間違っているものは間違っている、それを正すためにジャーナリズムの世界はあるのだ」という信念を気負うことなく描いたこの作品は、アメリカ社会の持つ民主主義の真摯な一面を信じられる内容ともなっているのだ!
哲学的示唆を含む映画ではヨーロッパの作品に遅れを取るアメリカ映画であるが、このようなジャーナリスティックな作品の描写は本当に巧いとうなりたくなる秀作である!
ぼくのチケット代は、2,400円出してもいいと思う迫力のある作品でした。
星印は、5つ差し上げます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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