日本のマンガ界における物語の発想観は世界を凌駕するブッ飛んだものがある。この「テラフォーマーズ」など、その最たるもののひとつである。
人間の遺伝子操作の中に昆虫の生存のための特性を埋め込み、火星で人間に形態化した巨大な昆虫と戦わせるなどという発想などは、そう簡単に思いつくものではない。
現在「週刊ヤングジャンプ」に連載中のこのマンガは、若者たちに大人気のコミックであり、映画界でも発想のブッ飛んだ内容に果敢に挑む鬼才・三池監督が、何と実写での映画化にチャレンジしてきた作品である。
21世紀、人類は<火星地球化計画>としてふたつの地球の生物を火星に送った。
その500年後、人類の思惑通り火星の大気量は増え、環境も地球に似た惑星となった。が、その様子を探査に行ったバグズ1号は、火星で謎の巨大生物に襲われ全滅した。そして2599年。日本政府はバグズ2号による火星探査を天才的科学者・本多をチーフにして実施する。選ばれた搭乗員は、艦長・堂島以下15人、本多はその全員に内緒で様々な特質を持つ昆虫の遺伝子を体内に注入していた。
その搭乗員はすべてが地球で何らかの事情を抱えた、いわば落ちこぼれであり、つまり捨て石軍団だったのだ。それは、ゴキブリに人間が勝てるかを観察するためだけだったのだ。人は、それぞれに与えられた昆虫細胞活性剤を注入し、形態変化しながら戦う羽目になるのだが、圧倒的な数の巨大ゴキブリ人の強さに多勢に無勢となり、次々と戦死していく。しかし、絶望的な状況の中、仲間への深い友情と信義が強まりながら最強の戦士と変身した小町を中心に戦い続けるのだが…。
三池監督は、渾身の力を込めてマンガに負けない作品作りに挑戦している。
最強の人型ゴキブリと昆虫形態の人間との戦いに次ぐ戦いを全編のほとんどを費やして描きながら、主要人物の過去をフィードバックして描写し、弱者への思いも語ろうと努める。その心意気は感じられる内容にはなっているものの、やはり実写版となると少しチープな内容となることは防げなかった。残念だが、今回はマンガに負けた感じ!
ぼくのチケット代は、1,900円なら出せる作品でした。
星印は、2つ半差し上げます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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