86分という、最近の映画の中では珍しい小尺の作品である。その分内容の余分なぜい肉をすっぱりとそぎ落とし、主人公の女性と巨大サメとの攻防に焦点を絞った直線的なストーリー構成がよく効いて、小粒だが結構スリリングな作品となっていた!
医学生のナンシーは、母親を難病で亡くした心の痛手から医学の道を諦めかけていた。その傷心な心を少しでも癒そうと、テキサスからメキシコのディープなリゾート地にサーフィンに友人と来たものの、友人ははしゃぎすぎ二日酔いのため、ひとりで地元のサーファー以外はあまり知られていない穴場の海岸に、カルロスという地元の男にヒッチハイクしてやってきた。
カルロスが威張っただけあって、その入り江は波も荒くロケーションのいいサーファーにとって絶好の場所だった。
地元の若いふたりの男だけがサーフィンしている海に、ナンシーは喜んで泳ぎに出る。
そのふたり連れのサーファーが帰った後、ナンシーはもう一回波乗りを楽しむために沖に出た時、傷だらけの鯨の死骸が浮いているのを発見する、そして様子を見ようと近寄った所を巨大なサメに襲われる。
太腿に深い傷を負ったナンシーは、地元のサーファーが言っていた干潮時だけ姿を現す岩礁にやっと泳ぎ着いたもの、その場所は海岸から200メートルあり、ナンシーの血の匂いに誘発されたサメがうろついているため絶望的な遠さとなる。
医学生であるナンシーは有りあわせの物で止血処理をして、岩礁にへばりついたまま一夜を明かすが満潮時間が迫った時、昨日の若い地元サーファーがナンシーを見つけ助けに来る。ナンシーはサメの存在を懸命に知らせようとするが声が届かずふたりのサーファーも巨大サメに襲われてしまった!
あらゆる局面がナンシーにとって絶望であるのを承知した彼女は、最後の賭けに出るのだが…。
ほとんど全編をナンシーと巨大サメとの攻防に絞り、しかし二の矢三の矢を矢継ぎ早にくり出しながら単調にしない工夫をこらして、観客を退屈させない脚本・演出力は大変巧みであり、巻き込まれ傷ついたカモメとナンシーの交情シーンなど遊び心のあるシーン、ナンシーのグラマスクな肢体を嫌気なく見せるサービス・シーンなど、B級映画のテイストを満喫させてくれる作品となっていました!
ぼくのチケット代は、2000円出してもいい作品でした。
星印は3つ半差し上げます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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