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シン・ゴジラ

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   2016/08/02

衛藤賢史のシネマ教室

官邸を中心として日本人の叡智をふり絞ってのゴジラとの攻防戦!という新機軸の発想により展開する「シン・ゴジラ」は、大人の観客をも唸らせる手に汗にぎるスリリングな作品となっていた。それはゴジラの自己進化というぶっ飛んだSF的発想と、日本というよりも現代近代国家の持つ国家運営のための複雑なチェック機構を吟味しながら、それぞれの役割で動く様をリアルな描写で見せるポリティカル・サスペンスの要素が、この作品で見事に融合できたからと考える。
はじまりは、東京湾での不可解な出来事からだった。その知らせを受けた矢口内閣官房副長官は、志村秘書官と首相官邸にある危機管理センターで情報を収集する。情報は錯綜し、混乱をきわめるが、矢口はネット上の動画から巨大な生物と推測するも高名な生物学者たちから否定されてしまう。が、若手の女性である環境庁課長補佐・尾頭はその説を肯定し、上陸の可能性を示唆する。そして尾頭の推測通り謎の巨大生物は、蒲田に上陸し、あらゆる建物を崩壊させながら東京都をパニックに陥れた。大混乱の日本政府は、大河内首相をリーダーにして危機管理センターで対策を練るも、様々なチェック機構を前に、各部門の意見が百花繚乱し収集がつかない。その間にゴジラと名称された怪獣は、自己進化しながら巨大になり東京都は壊滅の危機を迎えてしまう。遂に首相も決断し災害緊急事態宣言で防衛のため自衛隊の出動を命じるも、ゴジラの体はさらにパワーアップし手がつかない状態と化してしまう。その時、米国大統領特使としてカヨコ・パターソンが日本に来日する。矢口に接触したカヨコは、ある重大な秘密を知っておりゴジラを駆除するため米軍も参加すると告げる。が、矢口たち若手の研究チームは必死で日本を守るため、ゴジラを無傷で捕獲する作戦を考えていたのだ…。
のっけからいきなりゴジラが上陸し破壊しはじめる、というのは乱暴なはじまり(と思った)で、これは息切れするぞと危惧したのだが、庵野監督の脚本はぼくらの予想をはるかに超えた<シン・ゴジラ>の構想があったのだ、つまり単にゴジラが都市を破壊するというドラマでなく、日本の叡智を賭けたゴジラと人間の攻防戦という新たなゴジラ物を創造してきた!だからドラマの芯は日本のシステムへの信頼であり、それに沿って一糸乱れずすすむ心意気であり、それに新たなゴジラ像が加わるという作品なのだ。
そのため、かなり煩雑な群集劇となっているが、見応えのある作品となった。ラストの落とし所も、ゴジラへの愛がありながら、人間を信じる心が余韻で残る一級の内容となった!これこそ世界に誇れるゴジラ映画だと思う。
ぼくのチケット代は、2,400円出してもいい作品でした。
星印は、4つ半差し上げます。

5点満点中4.5点 2400円

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