OBS大分放送
衛藤賢史のシネマ教室

ぼくのおじさん

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   2016/11/08

ぼくら世代にとって、北杜夫と言えば『どくとるマンボウ航海記』だった。
精神科の医師でもあり、父君が歌人の斉藤茂吉である事も、この本を読んで知った。
その北杜夫の児童小説である『ぼくのおじさん』(1972)が山下敦弘監督により、松田龍平の主演で映画化というので、すごく興味をそそられて見たのだが、時代を現代に設定しておりながら原作のほのぼのとした雰囲気をよく出した楽しい作品となっている。
小学生のぼく(春山雪男)の家族は、公務員のお父さん、専業主婦のお母さん、妹の4人だが、お父さんの弟のおじさんが居候暮らしをしているので5人家族だ。
おじさんは哲学者で大学の非常勤講師をしているが、週一回だけなのでいつも家で猫とゴロゴロして口ぐせの「ワオ~」を連発するへんてこりんだけど面白い人なのだ。
ある日、学校で担任のみのり先生から、作文コンクールの宿題に家に住むオトナの人を観察して書きなさいと言われ、ぼくは<ぼくのおじさん>について書くことにした。
おじさんは、あまり収入がないので、お母さんから小遣いをもらう生活をしている。
いつもくだらないイタズラを考えては、その事でぼくや妹やお母さんから叱られてもケロッとして「ワオ~」と言うばかりか、運動神経ゼロときているのでぼくの仲間とのサッカーしても足をひっぱる存在。
そんなおじさんにお母さんとおばさんは見合い話しを持ちかける。気乗り薄のおじさんのお目付け要員としてぼくが同道する羽目になるが、ハワイの日系4世で写真家の稲葉エリーさんに一目惚れしたおじさんは、ハワイに帰ったエリーに会いたいばっかりに、あの手この手を使ってお金を貯めようとするが所詮ムリ。
ところが、ぼくの作文が全国で入賞し副賞が何とハワイ旅行!
ぼくとおじさんは勇んでハワイへと行くことになった。そのハワイでもドジ踏んでばかりのおじさんに、強力な恋のライバル出現!
さあ、ぼくの愛すべきへんなおじさんは、コーヒー園を経営しようとして悪戦苦闘しているおじさんのマドンナ・エリーさんのハートを射止めることが出来るのか?ぼくもドキドキのハワイの日がはじまったが…。
ぼくを演じた大西利空のナチュラルな演技と、松田龍平のおじさんの凸凹コンビが絶妙で、もうそれだけでこの作品がぼくらの心を捕らえる内容となったが、山下監督のたゆとうような演出力によって、世知辛さを忘れさせてくれる清涼剤的佳作となった!
ぼくのチケット代は、2,100円出してもいいほのぼの系の作品でした。
星印は、3ツ半差し上げます。

5点満点中3.5点 2100円

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