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2016/11/15
「アウトロー」(’12)につづく、リー・チャイルドの人気小説<ジャック・リーチャー>シリーズの2本目であり、今回は原作の18作目である『NEVER GO BACK』を映画化したものである。監督は「ラスト・サムライ」(’03)でトム・クルーズと組んだ、エドワード・ズウィックが担当し、小気味のいいアクション物に仕上げている。
陸軍MPの切れ者であったジャック・リーチャーは、ある事情から退任し今は一匹狼の流れ者として各地に放浪し、<悪>の匂いを嗅ぎつけると<法>のルールを無視した己の<ルール>で悪人を容赦なく退治していた。
そんなリーチャーが、自分の後任となったスーザン・ターナー少佐が国家反逆罪で逮捕された事を知る。清廉潔白な性格の彼女の廃語に蠢くきな臭い匂いを感じたリーチャーは、行動を開始する。陸軍の拘置所からターナー少佐を無理やり脱出させると、彼女の逮捕原因となったアフガンの出来事を、ふたりを追う民間軍事会社を交わしながら事件の真相を追いはじめる。途中でリーチャーが身に覚えがない、彼の娘と称する少女・サマンサもやむを得ず同行させる羽目になり、年頃の少女の言動や行動にリーチャーはふり回されながら三人の奇妙な逃避行が始まる。陸軍の精鋭であったリーチャーとターナー少佐は、追尾する追っ手を次々とやっつけていったが、ザ・ハンターと異名する元軍人だけはおそろしく手強い敵であり、執拗に三人を追い迫ってくる。
が、リーチャーの鍛えられた分析によって事件の闇にあやつる敵の正体がしだいに判明していき、決戦の舞台はハロウィンのパレードに沸くニューオーリンズとなっていくのだが…。
格闘術に長け、どんなピンチも冷静に判断し己れの持つ<正義>を貫くためには<法>のルールも無視して動くジャック・リーチャーも、少女の気持ちだけは理解できず混乱してしまうというエピソードを巧みに導入することによって、リーチャーのやさしさ、真摯な面を表現する手法は、ある面古典的ではあるが全編にあふれるアクションの色を和らげる効果を持つ演出となっている。少女を演じるダニカ・ヤロッシュは奔放でありながら一人で生きてきた知恵あるサマンサをチャームに演じ、ターナー少佐を演じたコビー・スマルダースの凛々しく強い女性の演技と相俟って、トム・クルーズのリーチャーだけを映えさせる作品とせず、トリオとしての面白さを生かした小気味のいい娯楽作品となっていたのはうれしい!
ぼくのチケット代は、2,200円出してもいい作品でした。
星印は、三ツ半差し上げます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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