「スパイダーマン」を生み出したコンビが;66年に発表した、マーベル・コミックでも異色の主人公の元・医師が超絶的魔術を自在に操つり、大いなる異次元の存在と対峙するという神秘的な物語で、主人公のドクター・ストレンジ役に、独特の陰影のある演技によってスターに伸し上がってきたベネディクト・カンバーバッチを起用した作品だ。NYの病院に勤務するスティーヴン・ストレンジは、天才外科医師であり、その手術する手は神の領域にあると謡われていた。だが天才にありがちな傲慢な性格で同僚医師を見下す態度で反感を持たれている。唯一、ER医師であり元・恋人のクリスティーンのみは天才ゆえのストレンジの心の孤独を理解していた。
だがある日、自身が起こした交通事故で<神の手>と称された両手の機能を喪失する。苛立ちからクリスティーンへも侮辱するストレンジに彼女も彼の元を去ってしまう。
絶望のドン底のストレンジに、ネパールにある謎の治療施設カマー・タージで重傷の患者が治ったという噂を聞き、ワラをもすがる気持ちでネパールに行く。
だがそこは、人智を超えた神秘の力を修行する道場であった。科学的知識が絶対と信じていたストレンジは失望を覚える。が謎めいた女性指導者エンシェント・ワンは、懐疑的なストレンジに静かな態度でのぞみ、高飛車なストレンジに宇宙の異次元世界へと誘い、現代科学をはるかに超えた世界を透視させる。科学の限界を知ったストレンジは、ワンの下で壮絶な修行に励む。天才的頭脳を持つストレンジは、ワンの過酷な要求を次々と乗り越えついに魔術師ドクター・ストレンジとして蘇がえった。
がその頃、ワンから離脱した弟子モルドが大いなる異次元の存在と組み、NY・ロンドン・香港にある異次元空間の出入り口を壊し、地球の壊滅を狙って攻めてきた。
地球を守るため、ドクター・ストレンジの死闘がはじまるが…。
「インセプション」娯楽版ともいうべき、NYの高層ビル群が水飴のように三次元を無視し、縦に横にグニャリと曲がる目に驚きの視覚効果や、「マトリックス」的無重力状態アクションの数々など、観客であるぼくらを楽しませようとする最新の特殊視覚撮影が満載されており、その中でアジア的雰囲気が濃厚な物語となっているのだ。
退屈な日々に飽き飽きした人にとって、格好のストレス解消になる娯楽映画である。
ぼくのチケット代は、2,000円出してもいい作品でした。
星印は、3ツ差し上げます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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