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マンチェスター・バイ・ザ・シー

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   2017/06/27

衛藤賢史のシネマ教室

アカデミー主演男優賞と脚本賞という主要部門を、地味な内容にも関わらず受賞した作品をやっと見ることができた。ベン・アフレックの弟であるケイシー・アフレックが、これでお兄ちゃんと遂に肩を並べることが出来たのは他人事ながらうれしい!マット・デイモンが企画し主演もしたかった作品だが、色々な事情でケイシーにお鉢が回ってきたらしく、代打で満塁ホームランを打ったような感じだろう。それにしてもマンチェスター・バイ・ザ・シーがアメリカの地名だなんてこの映画ではじめて知った(映画の中でボストンから一時間半の距離と言ってたね)。
ボストン郊外で便利屋として細々と暮らしているリー・チャンドラー(ケイシー・アフレック)。誰にも心を開かず、自分の過去を封印していた。そんなリーに兄ジョーの訃報の知らせがはいる。ジョーだけがリーの閉ざした心に理解していたのだ。すぐに故郷のマンチェスター・バイ・ザ・シーに帰ったリーはジョーの遺言状に息子のパトリック(ルーカス・ヘッジ)の後見人に指名されていることを聞き途方にくれる。リーは故郷に帰ることの出来ない事情があったのだ。子供時代のパトリックを可愛がっていたリーだが、もう16才の高校生になったパトリックはリーと一緒にボストンに住むことを拒否する。とにかくジョーの葬儀や残された漁船などの財産に関してパトリックが暮らせるように尽力するリーだが、故郷でパトリックと暮らすことは、過去の故郷での痛恨の出来事の心の痛手から立ち直ってない状態では出来ない相談だったのだ。さびれた漁村である故郷の町で、パトリックとギクシャクした生活をしながら、しだいに過去と向き合うことになるリーだが…。
小さなさびれた漁村の町で、リーのみならずそれぞれが心の傷を抱えながら生きていく様を、過去・現在を入れ込みながら淡々と描いていく内容なのだが、その淡々とした描写がかえって惻々とした感情をぼくらに伝えてくるのだ。繁栄のかけらもない置き忘れられたような町の中で呻吟しながら、それでも生きていかなければならない人生模様のひとコマが強烈に胸を刺す秀作となっている作品だ!ケイシー・アフレックの演技もすばらしいが、アカデミー助演にノミネートされたルーカス・ヘッジと、ミシェル・ウイリアムズ(リーの元妻ランディ)の出番は少ないが身に染みる心の痛みを背負った演技もすばらしいのだ。
ぼくのチケット代は、2400円出してもいい作品でした。
星印は、4ッ半さしあげます。

5点満点中4.5点 2400円

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