ナチス・ドイツに侵攻されたノルウェーで、一国の運命を託された国王が中立を放棄し降伏するか抵抗するかについて悩む3日間の出来事を描く作品。スペクタルな内容ではないが、北欧のノルウェーという小国(面積は日本と同じくらいだが、人口は約500万人)の持つ悲哀をじっくりと描写している作品だ。
1940年4月9日、ナチス・ドイツは地勢学的見地と鉱山を持つ中立国ノルウェーに侵攻した。まったく無防備なノルウェーは為すすべなく、圧倒的軍事力によって主要都市が陥落占拠されていった。1905年にスウェーデン=ノルウェー連合から独立したノルウェーは、デンマーク国王の第2王子を国民投票で可決し、ノルウェー国王ホーコン7世として迎えた。国家のあり方は、行政は国会議員が受け持ち、王は政治には関わらない、という立憲君主体制であった。本来は王が関わるべきでないナチス・ドイツとの政治交渉のはずであったが、ヒトラーは駐ドイツ公使クルト・プロイアー(カール・マルコヴィクス)に、ホーコン7世(イェスパー・クリステンセン)と直接交渉することを厳命する。クルトは中立国としてのノルウェーに好意を持っていたが抗うわけにはいかない。しかし降伏交渉しようにもホーコン7世は皇太子親子や政府要人と共に首都を逃れ行方をくらませていた。しかし、ドイツ軍の包囲網は徐々にホーコン7世たちに迫り、クルトはついに王と対面することになる。今まで政治に関わることのなかったホーコン7世は、自分の判断ひとつでノルウェーの国としての運命が決まることに悩む。そして、ホーコン7世の出した答えとは・・・。
太平洋戦争と今は言われる日本の戦争は1941年(昭和16年)からであるが、二次大戦は1939年のナチス・ドイツの広範囲のヨーロッパ各国への侵攻からであり、ノルウェーは開戦の翌年に侵攻されたのだ。そして政治には関わらないホーコン国王が、国家の帰趨を決定する判断を迫られる悲劇をこの作品はじっくりと描写していく。大国が小国を飲み込んでいく過程を、国王とナチス嫌いのドイツ公使にピンポイントで焦点を当てながら戦争という人類の愚行を描いていくのだ!
ぼくのチケット代は、2100円出してもいい作品でした。
星印は、3ッ半さしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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