文化大革命直後に中国で大ヒットした高倉健主役の「君よ憤怒の河を渡れ」(1976)のリメイクで、全編日本ロケを敢行しているウー監督の日本映画へのオマージュ作品!日本版(監督:佐藤純弥)は、151分という長尺だったが、ジョン・ウー監督はそれを40分も短くして、キビキビした演出の中にジョン・ウー独特の華麗でトリッキーな構成を入れ、香港ノワール時代を彷彿させる娯楽アクション映画に仕上げているのだ!
日本の世界的製薬会社[天神]の顧問弁護士である中国人のドゥ・チウ(チャン・ハンユー)は、会社のパーティーの翌朝、社長秘書の殺害死体の横で目を覚ました。何らかの罠に嵌められたと気付いたチウは、駆けつけた警官を振りきり逃走する。ひとりで捜査するのを好む大阪府警・捜査一課の矢村聡(福山雅治)は、新人の女性捜査官・百田里香(桜庭ななみ)を押しつけられクサっていた所に、事件を知らされ里香とチウを追う。独自の捜査方法に困惑しながら協力する里香と共に大追跡しながら、今一歩でチウを逃がした矢村は、あまりにも出来すぎの現場状況からチウの犯行を疑いはじめる。そしてチウと姿を消した謎の女性・遠波真由美(チー・ウェイ)が事件の鍵を握ると判断し、真由美が経営する牧場へと行くも凄腕の女殺し屋・レイン(ハ・ジウォン)とドーン(アンジェルス・ウー)に襲われすさまじい銃撃戦に巻き込まれる。そんな状況の中、チウを逮捕した矢村だが、同時にチウの冤罪を確信することになる。様々な状況から製薬会社と警察内部の結託を感じた矢村とチウは、命を懸けて製薬会社の秘密の実験所に乗り込むのだが・・・。
様々なカット割り、スローモーション、観客が体感するすさまじい銃撃戦、中国の武侠劇風アクションの数々、そしてジョン・ウーの代名詞にもなる白い鳩の乱舞、など全編ウー劇場満載のこの作品は、もう荒っぽい内容(じつは日本版もかなり荒っぽいのだが権力に反抗する姿が、文化大革命直後の中国庶民に圧倒的に支持されたらしい!)は二の次で、映像美とパワーで押しまくる演出を楽しむ作品となっているのだ!ウー監督、また日本を舞台にした作品を撮ってくれ~!
ぼくのチケット代は、2300円出してもいい作品でした。
星印は、2ッ半さしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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