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北の桜守

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   2018/03/13

衛藤賢史のシネマ教室

「北の零年」(05)「北のカナリアたち」(12)につづく吉永小百合主演となる;北の三部作;の最終章であり、脚本は3作とも那須眞知子が担当している。
 
1945年5月。北樺太に住む江蓮(えづれ)家の庭に、日本本土から持ってきた桜が花を咲かせた。ふたりの子供たちのために江蓮てつ(吉永小百合)が慈しんで育てたものだった。戦時であったが北樺太はまだ平和な雰囲気の中、一家は近所の人々と北に咲いた桜の下でお花見を楽しんでいた。しかし8月、樺太に突然ソ連が侵攻してきた。夫の徳次郎(阿部寛)は、妻てつとふたりの子供を網走に避難させ、自らは樺太に残り桜の木の元で再会を約束し戦うために旅立った。そして26年後の1971年と時は流れる。次男の修二郎(堺雅人)は、アメリカに渡って苦労の末、日系のフード・チェーンの日本社長としてオーナーの娘・真理(篠原涼子)を妻として札幌で開店するために帰国した。母てつの強い勧めながら後ろ髪を引かれる思いで渡米した15年後だった。修二郎は、すぐに網走でひとり暮らす母てつの所に急ぎ駆けつける。しかし、時代から取り残されたような暮らしをしている母てつを、自分のところで引取り一緒に暮らしはじめるも、成功した修二郎に迷惑をかけたくない母てつは網走に戻ろうとする。オーナーである真理の父が視察するため来日する日、修二郎は艱難辛苦の暮らしの中ふたりで寄り添って暮らした、悲しくひどかったがふたりの原点となった網走周辺の思い出の場所を尋ね歩く旅に出た。そこには誰も入ることの出来ない母子だけの世界だったのだ。そして、その旅で修二郎は母てつの心の奥に封印した慟哭の思いを知ることになる!
 
ケラリーノ・サンドロヴィッチの前衛的演劇シーンでドラマの流れを象徴的に表現する演出方法は成功したとは、ぼくには思えない。その方法を間に挟むことによって、紡がれるエピソードの数々は分断され、時・場所・年代や人との関りが見るぼくらに曖昧となり、いつ・どこで・なにが、という感情移入させる大事なドラマの要素が稀薄になってしまっているのだ。このような作品は、実写でグイグイと骨太のタッチで押していく方が、泣きたい!感動したい!と思ってハンカチを握りしめて見る観客への親切ではないかと思うのだ。
ぼくのチケット代は、1900円出してもいいと思う作品でした。
星印は、2ッ半さしあげます。

5点満点中2.5点 1900円

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