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ゲティ家の身代金

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   2018/05/30

衛藤賢史のシネマ教室

映画の完成間際、ゲティ役のケビン・スペイシーがセクハラのスキャンダルで降板し、急遽クリストファー・プラマーが代役で再撮影された!という曰くつきの作品だが、そんな事を全然感じさせない厚味のある内容にリドリー・スコットが仕上げていた。
 
1973(昭48)年、ローマ。石油を扱い一代で巨億の富を築いたジャン・ポール・ゲティ(クリストファー・プラマー)の17才の孫ポール(チャーリー・プラマー)が誘拐され、1700万ドルという巨額の身代金を要求する電話がポールの母アビゲイル(ミシェル・ウィリアムズ)にかかってきた。アビゲイルの夫のゲティ2世は父へのプレッシャーから酒とドラックで廃人同様になりアビゲイルと離婚し子供の養育権を放棄させられていた。守銭奴であり他人を絶対信用しないゲティは、そんな事情も重なり孫ポールへの身代金を払うことを堅く拒否した。アビゲイルは元・夫の父ゲティに身代金を出してもらう事を懇願するが冷たい対応をされてしまう。それでも誘拐犯と交渉する役をアメリカ諜報機関の出身でゲイルの身の回りを守りながら、中東の石油交渉で凄腕を発揮したフレッチャー(マーク・ウォルバーグ)をアビゲイルの元に出向させる。ゲティの意向が分からないアビゲイルは、フレッチャーと事毎に対決するが、しだいにフレッチャーのポールを救うため全力で当たる態度を理解しはじめる。その頃、誘拐犯の一味は交渉が進展しないことに苛立ちポールを冷酷なマフィアに売り払ってしまう。ゴロツキであるが素人同然の最初の誘拐犯とは違い、人の命を何とも思わない誘拐をビジネスとするマフィアによって、ポールの身に危険が迫ってきたにも関わらずゲティの態度は、孫の命をゲティ家の税金対策に利用しようとする。遂にしびれを切らしたフレッチャーは、アビゲイルと相談し様々な方法でゲイルを揺さぶり、ポールの命を救うため奔走するのだが・・・。
 
誘拐犯との虚々実々の駆け引きの手に汗にぎるサスペンスな内容ではあるが、リドリー・スコット監督の目は、巨億の財産を持つゲティの飽くなきお金への執着の心の闇へと向いている。その狭間に落ち込んだフレッチャーとアビゲイルの行動を通して、資本主義社会を睥睨する巨大財閥の金銭のみですべての物事を図るすさまじい執念が、ぼくらの心を慄然とさせる内容にもなっているのだ!実話にフィクションを混ぜたリドリー・スコットの演出力は、その執念を丁寧に喝破しながらサスペンスあふれる重厚なエンタテイメント作品に仕上げた、と言っていい!
ぼくのチケット代は、2400円出してもいい作品でした。
星印は、4ッさしあげます。

5点満点中4点 2400円

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