平柳敦子監督が、NY大学・大学院在学中に制作した短編映画を改訂し、95分の長編作品として発表したもので、カンヌ国際映画祭の批評家週間に上映される選出映画として選ばれた。
とある会社に勤務する節子(寺島しのぶ)は、43才の独身女性。若い頃、恋愛中の彼氏を姉の綾子(南果歩)に奪われた苦い過去を持つ。それ以来、魂の抜けたような状態で現在に至っていた。そんな節子に綾子の娘でメイド喫茶のバイトをしている美花(忽那汐里)が、英会話教室を自分の代わりに受講して欲しいという相談をもちかけてきた。気が乗らないまま、その怪しげな教室に代理受講した節子だったが、講師のジョン(ジョシュ・ハートネット)にとってもフレンドリーな態度でハグされ、おまけに金髪のウィッグを被せられ「きみはここではルーシーだよ」と宣告された瞬間、躰に電流が疾ったような衝撃を受ける。相方の生徒の中年の冴えない風貌の小森(役所広司)も節子に親しく接してくれ何かが自分の中で変化していった。だが何と!ジョンが美花と一緒にアメリカへ帰ってしまうという衝撃的な出来事が起こってしまう。そのショックで会社の送別会で決して言ってはならない事を口走ってしまう節子。後悔する節子の下に美花から絵葉書が届く。解き放たれた感情の抑制が効かないまま、節子は臨時休暇を取りふたりが同棲しているカリフォルニアに強引に同行する綾子と旅立つ。ネガティブから超アクティブに変身した節子は、ジョンを探しあてるが美花はいない。どうも大ゲンカして美花はジョンの下から飛び出していってしまっていたらしのだ!節子・綾子・ジョンの美花探しの旅がはじまる。過去の出来事からケンカの絶えない節子と綾子、それにジョンが加わったややこしい3人のアメリカでの道中。さらに節子のジョンへの思慕も加わり、こんがらがった状態の中、閉じ込めた心の鬱屈を全開に開放した節子の行動の果てに、さあ何が待ち構えているのか・・・?
本当の自分を隠したまま空気のように生きてきた節子と、ジョンによってルーシーの心に変身した瞬間の振り幅の極端な違いをデフォルメ的視線で描きながら、その両者でもない本当の自分への回帰を、寺島しのぶが巧みに演じている。
見る人にとって、その振り幅の大きさについていけない方もいると思うが、隠す人間と解放されすぎた人間の切なさが、ひとりの女性によって描かれる手法が新鮮であった。
役所、南、忽那、ハートネットの役柄の色分けも、それを支えるキャラとなっていた!
ぼくのチケット代は、2100円出してもいい作品でした。
星印は、3ッ半さしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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