今、日本のアニメーションを担う監督となった細田守の最新作。
現実の世界と異次元の世界を繋ぎながら主人公の心の成長潭を描いてきた細田監督が、今度は家族・親子の在り方をテーマとして選んできた。
建築家のお父さんと、キャリアウーマンのお母さんの間に生まれた[くんちゃん]には妹が誕生した。[未来(ミライ)]と名付けられた赤ちゃんの妹に、お父さん・お母さんの愛が移ったことに[くんちゃん]は大むくれ!なんとかお父さん・お母さんの愛情を[未来]から取りもどそうと、あの手この手の大あばれしてはふたりを困らせている。
ある日、いたずらの度がすぎてお母さんから叱られた[くんちゃん]が、中庭で「もうお父さん・お母さんは[くんちゃん]を嫌いになってる~」と泣いていると、突然見知らぬセーラー服のおねえちゃんが現れた。そしてわたしは未来から来た[ミライ]よと言う。幼い[くんちゃん]には訳が分からない。だけど[くんちゃん]が淋しい時に現れては[ミライ]は、[くんちゃん]を連れて時を超えた世界へといざなってくれはじめた。それは[くんちゃん]が見たこともない世界、時空を超えた家族の世界だった!お母さんとおばあちゃんが話していた、ひいおじいちゃんの世界、お母さんが[くんちゃん]と同じ年頃の世界、そして未来の世界などなど。連綿とつづく過去からの[くんちゃん]の家族が紡ぎだす絶えることのない蚕のやわらかい糸のような愛の話しだった・・・。
今までの細田監督の作品は、現実世界と異次元世界をドッキングさせながらも、しっかりとした流れのある物語構成のあるものだった。今回もそんな流れを予想していたので、最初はちょっと面食らってしまった。つまり物語の流れがないのだ!現在の生活を物語の基点に置いてはいるものの、[くんちゃん]と[ミライ]の行動はその基点を中心軸にして四方八方へと放射状に広がっていく構成となる、いわば実験的内容になっていたからだ。そういう意味では意欲作と言っていいのかも知れない。が、こんな四方八方へ飛び散る内容に食いついていくのは大変な理解能力(もちろん見ていく内に理解できるのだが)を要する作品だなあ、とため息をつきながら見たことも正直言っておく。
ぼくのチケット代は、1900円出してもいい作品でした。
星印は、3ッさしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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