ドイツでは暗黙の禁忌とされる<アドルフ>という名前を、生まれてくる子供につけようとして起こる家族の侃々諤々の大騒ぎを描いた作品!元は「名づけ」というタイトルで評判になった演劇を映画化したもので、名前から派生する論争がドミノ倒しのように、家族の内に秘めた<本音と建て前>まで暴露されていく様を毒っ気たっぷりのユーモア・センスで描いていく会話劇となっています。
舞台は現代ドイツ。ライン川のほとりに住む高名な文学教授ステファン(クリストフ・マリア・ヘルプトス)と教師のエリザベス(カロリーナ・ペータース)の邸宅でエリザベスの弟で実業家のトーマス(フロリアン・ダービト・フィッツ)とその恋人、家族同然の音楽家レネらと晩餐会を開こうとしている。少し遅れてくるという恋人の出産を間近に控えたトーマスが、お腹の中の子は男の子だといい、自分が<名づけ>ようとする名前当てのクイズをはじめる。ステファン・エリザベス・レネたちは和気藹々とした雰囲気で名前を挙げていく。トーマスはヒントとして[A]の頭文字だと言う。皆は蘊蓄をかたむけてAではじまる名前を言うが当たらない。そして勿体ぶった様子でトーマスが挙げた名前が<アドルフ>だった!激昂するステファン、唖然とするエリザベスとレネ。トーマスは名前に罪はないと平然とする。が、収まらないステファンははげしく反論し、会話はドイツの歴史やナチスへの罪へと展開していくがトーマスはゆずらず色々な名前の例を出して反論する。ついに感情的になったステファンはトーマスをののしりはじめる。晩餐やワイン飲みはふつうにしながらヒートアップする会話は家族の隠し事までいき、収拾がつかなくなった時に身重の恋人の来訪によって、とんでもない内容が暴露され皆が凍りつく事態へと発展してしまう・・・。
感情の抑制が解かれた親密な家族の本音が分かっていく過程を、アドルフの名前を発端として誘導されるこの作品は、びっくり仰天のオチによって絆の解消までの90分間、静~動~静の見事なシチュエーションの展開によって、次々と暴露されていく家族の秘め事の連続が、ぼくら観客に結末はどのように着地点をもってくるのかドキドキさせながら最後までひっぱっていってくれる内容となっていたのです!で、ラストのオチは?それは見て楽しんでください!とだけは言っておきます!
ぼくのチケット代は、2300円出してもいい作品でした。
星印は、4ッさしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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