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メンフィス・ベル

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   2020/06/09

衛藤賢史のシネマ教室

第2次大戦下のヨーロッパ戦線。ドイツ都市の爆撃に赴くアメリカB-17爆撃機の若き搭乗員の、紙一重の差で生死を分ける爆撃行を描きながら、同時に猛々しい戦争物とは一線を画したリリシズムの同居する異色の戦争映画となっているのです!

1943年、イギリスにあるアメリカ軍の飛行基地。連日この基地からドイツ都市への爆撃を敢行するB-17爆撃機の搭乗員の大半は10~20代の若者たちだった。反撃するドイツ軍の高射砲群によって撃墜される爆撃機も多かった。基地司令は帰還する爆撃機の数を心を痛めながら数えていた。爆撃行のノルマは25回の出撃であり、奇跡的に24回の出撃で生還した<メンフィス・ベル>号に最後の25回目の出撃が命じられた。この任務を無事果たすと除隊となりアメリカへ帰ることが出来るのだ!その前日、広報担当将校が企画したパーティーで、搭乗員たちはそれぞれ自分たちのジンクスで行動するが気持ちの整理がつかない。出撃当日、ドイツの気象予報でしばらく待機させられる。じりじりしながら待つ搭乗員たちは、愛犬と戯れたり詩を読んだりしながら心を静める。だが前の24回の出撃と様々な事がかみあわない事に不吉な気持ちに襲われる。待つことしばしやっと出撃の合図で、編隊を組んだB-17爆撃機隊はドーバー海峡を越えてドイツへと向かう。機長をリーダーとした複数の部門を担当する搭乗員たちの大半は10~20代の若者たちで編成されていた。足の遅い爆撃機の天敵は戦闘機であり、ドイツの戦闘機にかなりの機が撃墜されながら<メンフィス・ベル>号は目的地上空に到着するも気象予報と違い雲が多く目標が見えない。何回も旋回すれば高射砲が当たる確率が高くなる。そして・・・。

スリリングな爆撃行のリアルな描写によって、ぼくら観客は爆撃機に同乗したような恐怖の体感を覚えさせる撮影の見事さによって、戦争の惨さをバーチャルで経験する!そしてそれに従軍する若者たちの明日の命の保証もない青春の姿を、あえてリリカルに描くこの作品は、今日を生きるしかないこの時代の若者たちの心根をその手法によって対比させることによって、忘れがたい青春物の傑作となっているのです。無駄な描写のまったくない流れ!ニッコリする巧みな伏線の置き方!最後の最後まで読めない展開!そしてそれぞれの心理描写の丁寧さによる余韻!良質な映画の条件をすべて備えた作品はあまりないが、これはそんな一本であるのは確かなのです。
ぼくの星印は、5ッさしあげたい作品でした。

5点満点中5点

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