ノラ猫たちの一夜の舞踏会を描いたミュージカル「キャッツ」は、1881年のロンドンで初演され世界中の観客動員数8千万人という大ヒット作品となった。登場するのはすべて猫!おまけに一夜だけの舞踏会だけという物語性の稀薄な内容で、映画化は難しいと言われた作品に、ミュージカル「レ・ミゼラブル」の映画化に成功したトム・フーパー監督が挑んできた。
満月が輝くロンドンの片隅のゴミ捨て場に、若い臆病な白猫ヴィクトリア(フランチェスカ・ヘイワード)が飼い主から捨てられた。そんなヴィクトリアに興味深々で集まるノラ猫の群れ。辛い状況のなかでもしたたかに生き抜く気力のあるこの群れは<ジェリクルキャッツ>と呼ばれる、人間に飼いならされることを拒み自由に生きる個性ある猫たちだった。おびえるヴィクトリアに、勇敢で兄貴肌のマンカストラップ(ロビー・フェアチャイルド)が庇い仲間に入れることを許す。その満月の夜は、そんなノラ猫たちにとって大切な夜のはじまり。舞踏会で選ばれた、一匹の猫だけが満月の輝く天上界に登り新しい人生を生きることを許される特別な日だったのだ。その猫を指名できる権限をもつのは、慈愛に満ちた長老猫オールドドュトロノミー(ジュディ・デンチ)のみ。様々な特技と個性をもつ猫たちの華麗な舞踏会がはじまる。その中で参加することも適わない、孤独な猫グリザベラ(ジェニファー・ハドソン)ヴィクトリアはなぜか魅かれていく。そんなヴィクトリアをじっと注目するオールドドュトロノミーの慈愛あふれる目。舞踏会がクライマックスに達するのだが、そこに・・・。
生のミュージカル舞台では、様々な個性的な猫たちの特技が楽曲・歌によって舞台上で乱舞される様が、観客の高揚感を盛り上げることは必至の作品だが、スクリーンで見るという映画の特質によって舞台と観客席が一体感を共有する感覚が薄れたことは確かである。つまりドラマ性がないので映画化が困難であると判断されたのはそこなのだ!トム・フーパーは、舞台では主役でないヴィクトリアの目を通して舞踏会までのいきさつを描くという手法を試み、ドラマ性を打ち出そうと工夫しているが、どこまで映画の観客の心を捕らえたか?評価が分かれそうな作品となっていたのだ!
ぼくのチケット代は、2100円出してもいい作品でした。
星印は、3ッさしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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