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男はつらいよ、お帰り 寅さん

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   2020/01/07

衛藤賢史のシネマ教室

1969年(昭44)から1997年(平9)まで49作を数えた<寅さん>シリーズが、22年ぶりに蘇ってきた!あの下駄顔の懐かしい渥美清さんに(:96逝去)に、スクリーン上のマジックとしても再び会えた。それだけでもう幸せ!とオールド・ファンは思う作品だった。

あれから22年。寅さんが様々な薫陶?を施した甥っ子の満男(吉岡秀隆)は、もう中年になっている。しかし7年前に妻を亡くし、中学3年の娘(桜田ひより)と暮らしながら、一念発起してサラリーマンを退職し小説家となり新人賞を取り少し注目される身となっていた。編集者の女性(池脇千鶴)は、そんな満男に淡い慕情を持ちながら、シャイな満男が売れっ子になるよう後押ししサイン会を開く。そのサイン会に偶然、満男の初恋の人・泉(後藤久美子)が現れた。泉はヨーロッパに留学し、難民救済の仕事が日本であり帰国したばかりだった。そんな泉を満男は「会わせたい人がいる」と小さなジャズ喫茶に連れていく。そこはかって寅さんの恋人だったリリー(浅丘ルリ子)が経営する喫茶店だった。泉は奄美大島で出会ったリリーと寅さんとの思い出を話しながら、満男の良き理解者だった寅さんとの思い出に浸るのだった。満男はそんな泉を葛飾柴又の家に招待する。泉はそこに泊まったことがあるのだが、団子屋がカフェに変わったものの、昔ながらのたたずまいに満男の母さくら(倍賞美津子)と父の博(前田吟)がおり、暖かく迎えてくれる。満男の脳裏には次から次へと、破天荒だが心根はまっすぐだった愛する叔父・寅さんとの懐かしい思い出が走馬灯のように浮かんでくるのだった。そして青春の消えない思い出を共有した泉の帰国の時期が迫ってくるのだが・・・。

49作シリーズの寅さんとマドンナたちとの話しを、古いフィルムをデジタル処理し明度を上げて、現在の話しとドッキングさせながら見せてくれるこの作品は、長年<寅さん>シリーズを愛し見つづけてきたファンにとって、たまらない懐旧にあふれる内容となっていた。そしてもう過去は戻らないということをしみじみと感じた作品でもあったのだ。だがここには日本人が忘れかけている他人への思いやりや、情け深さがぎっしりと詰まっており、心の教科書の役割を果たしていた映画があったのだ!
ぼくのチケット代は、リスペクトを込めて2300円出してもいい作品でした。
星印は、3ッ半さしあげます。

5点満点中4点 2300円

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