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第三夫人と髪飾り

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   2019/11/12

衛藤賢史のシネマ教室

ニューヨーク大学で学んだ女性監督のアッシュ・メイファが、自身の曾祖母の体験を元に描いた19世紀のベトナムの富裕な一族の物語です。

物語は、北ベトナムのチャンアンに嫁ぐ14歳のメイ(トラン・ヌー・イェン・ケー)が小船に乗ってゆるやかな流れの河をいくシーンからはじまる。富裕層の一族は跡継ぎの男子を生むため一夫多妻制であり、メイは14歳の身で3人目の妻として望まれて嫁いだのだ。養蚕を営む大地主一族のこの家庭は、第一夫人は穏やかな方であり成人前のひとり息子がいる。第二夫人は魅惑的な方であり三人の娘を生んでいる。彼女たちはやさしくメイを迎えてくれた。初夜の儀を得て晴れて第三夫人となったメイはやがて妊娠する。無邪気な性格のメイだったが、妊娠して世継ぎの<男子>を生んでこそ正式な<奥様>になれることを知る。夫人としての日々の日常仕事を教育され励みながら、出産に向けて北ベトナムの季節が流れていく中、メイは一族のしきたりや、娘しかいない第二夫人の内に秘めた秘密の出来事、その娘たちの女として生まれた悲しい気持ちを知っていく。そしてメイは出産するが・・・。

<男子>を生むことだけが女の務めであった19世紀ベトナムの大地主の一族を舞台にしたこの作品は、耽美な内容でありながら透き通るような瑞々しさを全編漂わせる秀逸な映画となっていた!女性たちのさざ波のような気持ちの揺れを東洋的慎み深い描写で描きながら、いつまでも残像で残るベトナムの青き自然の豊かさ・夫人たちがゆったりと纏うアオザイの色・うねる蚕の様・たゆとう河などがすばらしい脇を勤め深みを与える内容としていた。東南アジアについての深い知識と歴史を知らない、ぼくら日本人にとってベトナムの若きアッシュ・メイファ監督の描く世界は新鮮であると同時に、それらすべての自然描写が問わず語りに登場人物の心の様を寓意するのを容易に理解できる表現で、ぼくらは同じ東洋人として自然と共に生きてきた世界での感覚に共鳴感を覚える作品ともなっていたのだ!
ぼくのチケット代は、2400円出してもいい作品でした。
星印は、4ッ半さしあげます。

5点満点中4.5点 2400円

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