芥川賞作家である平野啓一郎の同名小説を映画化した作品。世界を股にかけながら活躍する中年にさしかかった男女の一途な恋情を、東京・パリ・マドリード・ニューヨークへと舞台を変えながら描いていくメロドラマである。
10代の頃から天才ギタリストとして頭角を現し、登り龍の勢いで世界を舞台に活躍している蒔田聡史(福山雅治)は、40代にさしかかり心身の衰えを感じ苦悩していた。東京公演での演奏後、疲れ果てていた蒔田に主催者の女性から友人の小峰洋子(石田ゆり子)を紹介され一目で恋に墜ちる!洋子はジャーナリストとしてパリを中心にテロなどの事件を報道する活動的な女性であり、蒔田の尊敬するフランスの映画監督の義理の娘でもあった。
だが、洋子には日系アメリカ人(伊勢谷友介)実業家の婚約者がいた。蒔田に心酔するマネージャー(桜井ユキ)は、そんな蒔田の恋心に不安を覚える。そんな折、洋子はパリでテロに遭遇し仲良しの同僚が犠牲になった。心身共に参った洋子の態度を心配した蒔田は、敬愛する師(古谷一行)のマドリード公演に参加しパリで洋子と会う。食事しながら蒔田は、率直に自分の気持ちを打ち明ける。洋子も東京で蒔田と出会った瞬間から自分の気持ちが傾いていくのを自覚していた。蒔田と洋子は、東京で会うことを約束する。だが、その当日に師が脳梗塞で倒れたという知らせが蒔田に入る。連絡をマネージャーに託した蒔田は病院に詰める。そしてマネージャーが洋子に打ったメールとは・・・。
メロドラマの王道のような恋する男女に派生する起伏多い物語の流れに、現代世界の不安定な情勢を盛り込む描写。東京・パリ・マドリード・ニューヨークのロケーション。もう若くない男女の一途な恋情と、自分たちの置かれた現実で揺れ動く微妙な心。それらを満載した大人の恋を描いたこの作品は、一言で言うと、上品できれいな作品に仕上げられていた。ラストで<マチネの終わりに>というタイトルが理解されるのだが、このような大人が主人公のラブストーリーが最近の日本映画で撮られない中、西谷監督は「昼顔」につづいて挑戦してきたのに評価したい作品となっていたのだ!
ぼくのチケット代は、2100円出してもいい作品でした。
星印は、3ッさしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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