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パリに見出されたピアニスト

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   2019/10/29

衛藤賢史のシネマ教室

母子家庭の貧しい環境で身を持ち崩しかけた青年が、著名な音楽家にその才能を見出されピアニストとして成功するまでの紆余曲折を描いた物語。ピアノのコンペティションを描いた、「蜂蜜と遠雷」を<静>的物語とすると、この作品は<動>的物語となっている。

パリ北駅に置かれたピアノで無心に演奏する若者、その独創的弾き方をじっと見つめる中年の男。警察がその若者を誰何し一目散に逃げるのを追いかけるが逃げられてしまう。若者の名はマチュー(ジュール・ベンシェトリ)。母子家庭の貧しい環境で育ち悪友たちと密売商売に手を染めているが、幼い頃やさしいピアノ弾きの老人から基礎を教えられ、独学でピアノを習得した絶対音感をもつ天才であった。マチューは捕らえられ、窮地に陥るが身元引受人が現れる。駅でマチューの弾くピアノを見つめていたパリ国立高等音楽院の教授ピエール(ランベール・ウィルソン)だった。音楽院での公益奉仕を条件に釈放されたマチューは、ピエールから同僚の厳しいレッスンで名高い<女伯爵>と学生から恐れられているエリザベス(クリスティン・スコット・トーマス)からピアノを習うことを命じられる。実はパリ音楽院は、ここしばらくピアノのコンペティションで優勝者を出してなく予算を削られそうになっていた。ピエールはマチューの天才ぶりにパリ音楽院の運命を賭け、コンペティションの代表にしようと考えていた。そのためには一から基礎レッスンを施す必要があるとエリザベスに厳しい指導を依頼したのだ。しかし、独学でピアノを楽しんだマチューはエリザベスの基礎からの厳しいレッスンに戸惑い、幾度もレッスンをさぼりはじめる。刻一刻とコンペティション大会の日時が迫る中、ピエールとエリザベスのマチューへの指導に対してパリ音楽院の内部で疑問が生じるのだが・・・。

マチューの反発心!その天才ぶりを認めながらマチューに振り回されるピエールとエリザベスの苦闘を描くこの作品は、稀有の才能を持ちながら貧しい家庭に育ったマチューの音楽に対する考えと、ピエールとエリザベスの音楽のみの生活で育った富裕な階層の考えのギャップを相対させながら、三者の溝がピアノから生まれる純粋な音楽への愛で埋まっていき昇華するまでの過程を動的に描いていき、「蜂蜜と遠雷」とは趣きの違う内容だが良質の出来となっていた。さらにバッハやリストやラフマニノフの名曲をピアノ演奏で堪能でき、クラシック・ファンにとって魅力のある作品となっているのだ!
ぼくのチケット代は、2200円出してもいい作品でした。
星印は、3ッ半さしあげます。

5点満点中3.5点 2200円

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