製作会社[PLAN・B]を創立したブラッド・ピットが製作・主演を兼ねた、近未来の宇宙に進出した人類の葛藤を描いた作品である。
月や火星を征服した人類が、さらに遠いアド・アストラ<星の彼方へ>を目指す100年後の時代。宇宙飛行士ロイ・マクブライド少佐(ブラッド・ピット)は、宇宙の開拓に多大の功績をあげ英雄とされた父クリフォード(トミー・リー・ジョーンズ)が地球外知的生命体の研究中に、アド・アストラで16年前に行方不明になった事件で宇宙軍本部に呼び出される。本部幹部はロイに父クリフォードが生きており、さらに父が不穏な計画を企んでいる可能性がある事を知らせる。英雄のはずの父が犯罪者として太陽系の彼方の星で生きている!というやり切れない思いで本部の命令のままロイは父を探すアド・アストラへの旅に出る。月を経由して火星までの人類の管轄下の基地へ、それからは未知の太陽系の彼方の海王星への困難な捜索の旅。月では各国の人類が所有権をめぐって争いをしつづけている戦いに巻き込まれながら、ロイはやっと火星に到着したのだが本部から地球にもどる事を命令される。不本意な命令の裏に自分が本部から疑われている事を知ったロイに、火星基地の女性所長(ルース・ネッガ)が命令に違反する助けの手を出してくれ、宇宙船を得たロイは海王星へとたどりつく。そしてそこで見たものは父の宇宙船から出る強力な電磁波だった。その電磁波は太陽系全体に悪影響を及ぼし破滅させる可能性があったのだ!父が恣意的に太陽系の破滅を画策しているのか?父は本当に生きているのか?それとも何らかの原因の事故なのか?ロイは意を決してその父の宇宙船に乗り込むのだが、そこには・・・。
今や宇宙物はサイエンス・フィクションではなくサイエンス・ファクトであるという意気込みの元に製作されたこの作品は、暗い深淵な宇宙世界をリアルな表現で大画面いっぱいに再現されるCG技術のクオリティの高さは圧倒的ですらある。しかしドラマの組み立ては散文的であり、この作品が何をメッセージとして伝えたいのか!という意図が見えないのだ。つまり描写におけるサイエンス・ファクトに拘りつづける余り肝心のドラマの内容が浅くなってしまい、ドラマから受ける感銘が伝わらないイライラ感が残る内容となってしまったかな、と思う作品であった。
ぼくのチケット代は、2100円ぐらいかなと思う作品でした。
星印は、3ッさしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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