百田尚樹の同名小説を映画化した作品である。
<フォルトゥナ>とはローマ神話の運命を司る神の名前で、他人の死が見えてしまうという運命を背負った青年を主人公にした神秘的メロドラマな内容となっている。
木山慎一郎(神木隆之介)は親代わりに育ててくれた遠藤夫妻(時任三郎/斉藤由貴)の経営する自動車修理工場で働いている青年。慎一郎は幼少期に飛行機事故に遭い、奇跡的に生き残った辛い過去をもっており、それ以来<死を目前にした人間が透けて見える能力>というフォルトゥナの瞳と言われる特殊能力を持ってしまっていた。その能力をひた隠しして遠藤夫妻の経営する会社でこつこつ真面目に働いていたが、無口で目立つことを恐れながら生活していた。そんな慎一郎は金田大輝(志尊淳)という同僚の妬みから乱暴を受け、壊れたガラケーの携帯の修理に訪れた店で丁寧に対応してくれた桐生葵(有村架純)の手が透けて見えることに愕然とする。それとなく予言するのが精一杯の慎一郎。その後、二号店の店長に抜擢された慎一郎の所に葵が訪ねてくる。葵はその後、事故に遭わなかったお礼にきたのだ。自分の特殊能力を葵に言えない慎一郎だったが、葵への思慕が増す。そして葵も慎一郎への思いを告げ、ふたりは恋人関係に入るのだった・・・。
慎一郎ははじめて幸せな生活を得たが・・・。
他人の死が分かるちうのが、精神的に負担となり誰とも親しくできない青年の苦悩を描きながら、しかし偶然から愛する人を見つけたばかりに、その人を守るために自分は何をすべきか!という命題を柱にした神秘的メロドラマとなるこの作品は、後半になるにつれ残念ながらツメが甘くなってしまった。つまり慎一郎の特殊能力の描写が、前半部分で少し多めに出した割りには、その羅列が後半のクライマックスへの重要な伏線には成りえない、点としての描写になってしまったようで、そのツケが大事な後半のクライマックス・シーンで慎一郎と葵の心理描写を丁寧に描けず、急いでしまった感のある内容になっていたのだ。面白い題材だったのでウエイトの置き方が、中途半端になったのが残念であった。
ぼくのチケット代は、2000円出してもいい作品でした。
星印は、2ッ半さしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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