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   2019/01/22

衛藤賢史のシネマ教室

2016年フジテレビや関西テレビで放映され反響を呼んだドキュメンタリー作品。監督の信友直子の年老いた両親を、娘の目と第三者の制作者としての目で追いつづけたものだ。

広島県呉市に住む父95歳、母87歳。ふたりは介護の世話にならず生活していた。帰郷しては両親の姿をファインダーで追いかけていた信友直子は、母の物忘れが次第にひどくなるのに気づく。病院で認知症と判断されテレビ局の仕事を辞めて介護しようかと考えはじめるが、両親は拒否する。実は直子は45歳の時、乳ガンと診断され手術を決心した時、母がつきっきりで介護してくれた過去をもっていた。落ち込んだ直子をユーモアたっぷりの愛情で支える母。直子はそんな自分と母の姿をビデオにおさめていたのだ。元気になった直子は以来、帰郷しては両親の姿をビデオに撮ることにしていた。父は達者だが耳が遠く会話も思うにまかせない。働き者の母は家の仕事の大半を引受け、誰の世話にもならず平穏に暮らしていた。その母が認知症!物忘れがひどくなり落ち込む母を、今度は父が支え<男子、厨房に入らず>の昔かたぎの父が台所仕事をしていた。父が直子に言う「(介護は)わしがやる。あんたはあんたの仕事をせい」と。直子は帰郷を増やし、そのふたりの姿をカメラに収めはじめた。

父母の生い立ちのセピア色の写真、ひとり娘の直子の成長する写真を挿入しながら、激動する時代を生き抜き、今は95歳と87歳になった両親の姿を、ある時は冷静な第三者の目として、ある時は主観的なひとり娘の揺れ動く心となり、一本のドキュメントとしてまとめたこの作品は、親子の深い結びつきと同時に、年老いてもかたくなに家庭を守ろうとして台所仕事や家事洗濯に励む夫と、認知症がひどくなりながら夫の慣れぬ仕事ぶりを見てふがいない自分を責める妻の態度を、断腸の思いで撮る娘の態度と語りに涙せずにはいられないドキュメンタリーとなっているのだ。年老いても楽隠居が許されぬ、地方の老人への警鐘を声だかに叫ぶ手法でなく、淡々と両親への深い尊敬と愛情をそそぐ娘と、娘を愛する両親の態度を撮る手法によって、みるぼくらは、なぜ日本はこんな状態になったの???の思いを深くさせる作品となっていたのだ!
ぼくのチケット代は、2300円出してもいい作品でした。
星印は、4ッさしあげます。

5点満点中4点 2300円

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