アメリカとメキシコの国境沿いに巣食う巨大な麻薬カルテルに立ち向かうFBI・CIAの戦いをスリリングに描いた「ボーダーライン」の第二弾作品である。
メキシコ検察庁の硬骨漢検事アレハンドロ(ベニチオ・デル・トロ)は、最大麻薬カルテルによって妻子を無残な方法で殺され、復讐の鬼と化して殺し屋に変貌した。前回のミッションでアメリカに荷担した後、南米各地をさ迷っていた。その頃、アメリカのカンザス・シティのスーパーで自爆テロが発生した。CIAのマット・グレイヴァー(ジョシュ・ブローリン)の緻密な捜査によって、その犯人らが不法入国ビジネスも手掛ける麻薬カルテルの手によってメキシコ経由でアメリカに潜入したことを突き止め、前回のミッションで組んだアレハンドロに再び協力を依頼する。今回の作戦は、アレハンドロの妻子を殺した麻薬カルテルが深く関与したと見て、そのカルテルの16才の娘イザベル(イザベラ・モナー)を誘拐し、その仕業は別のカルテルとして、内紛を引き起こし自滅させようというものだった。その極秘作戦は表面上ではアメリカ政府が関与していないという事を前提とするもので、失敗すれば実行するアレハンドロたちは見殺しという無慈悲な作戦だった。マットやアレハンドロらの極秘行動によってイザベルの誘拐は成功する。しかし、この作戦はカルテルに通じるメキシコ警察一部の裏切りで絶体絶命の窮地に陥ってしまう。アメリカ政府はそれを知りメキシコに潜入したマットやアレハンドロを見捨てる方針を取る。メキシコの地で孤立されることを余儀なくされたアレハンドロは、憎い仇敵の娘であるイザベルを連れたまま無事脱出する方法を考えるのだが・・・。
アメリカとメキシコの水面下で、国家同士の衝突を避けながら極秘で暗躍するCIAの活動を活写していくこの作品は、国家の体面の影ですべてのルールを無視して動く闇の世界の怖さをスリリングな描写で描いていく。加えてアレハンドロの怨念と、その対象相手の娘と逃避行する彼の葛藤を横糸に置いた重層的展開によって、見るぼくらは一瞬も画面から目を離せない緊張の連続でクタクタになってしまうのだ。格差のありすぎる国家同士が陸続きのボーダーラインを持つ怖さを実感するノンストップ・ポリティカルサスペンスな内容となっているのだ!
ぼくのチケット代は、2300円出してもいい作品でした。
星印は、3ッ半さしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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