1973年に発表されたジョン・ベレアーズのゴシック・ファンタジー小説「壁のなかの時計」を映画化した作品である。
両親を交通事故で失ったルイス少年(オーエン・バカーロ)は、ひとりで重いトランクをさげて唯一の叔父ジョナサン(ジャック・ブラック)の家にやってきた。ジョナサンは母の兄だが今まで会ったことがなかったのでシャイな性格のルイスはビクビクしていた。でもジョナサンはルイスを大歓迎してくれたが、住んでいるゴシック風の邸宅には、数百の時計や奇妙な人形が立ち並ぶ不思議な雰囲気をかもし出す作りだった。実はジョナサンは魔術師で、そのためルイスの家族とは疎遠になっていたのだ。また隣に住むフローレンス婦人(ケイト・ブランシェット)もジョナサンと会えばいつも口ゲンカする仲だが、彼女も優秀な魔術師だったのだ。そこから転校先の学校に通うことになったルイスは、シャイな性格と変な家に住んでいるとの理由で友達ができずガキ大将たちからいじめられてしまう。しかしガキ大将のひとりである少年とやっと友達になり、彼の関心をかうため家に招待する。だがその少年が、ジョナサンから絶対に開けてはいけないと約束された秘密の戸棚をあけられ大変な事態が起こりはじめる。ルイスはジョナサンから少しずつ魔法術を教えられていた矢先だった。実はこの邸宅は、ジョナサンと昔コンビを組んでいた魔術師のものだったのだが彼は世界を消してしまう魔術をする際に亡くなり、彼が仕掛けた秘密がこの邸宅のどこかに隠されているのを解除しようとジョナサンとフローレンスが住んでいたのだ。友達が欲しいばかりに、ルイスがした行為がキーとなり、その魔術師が蘇ってしまったのだ。ルイスとジョナサンそしてフローレンスは必死になって世界が消滅するのを防ごうと、三人の力を結集して強大な力を持つ魔術師に対抗するのだが・・・。
ゴシック風な邸宅の中で起こる数々の魔術合戦を、驚きに満ちた描写で描きながら、ジャック・ブラックのコミカルな演技を随所に挿入したこの作品は、ルイスの両親への思慕の思いと、孤独な少年の学校生活を織り混ぜた内容となっている。作品としては「ハリー・ポッター」シリーズ的内容なのだが、よりシンプルにしてターゲットとする観客は10代層と決めたような作りになっていたのだ。でも次世代の映画ファンを作るためには、こんな作品も決して無視できないのだ。
ぼくのチケット代は、1900円出してもいい作品でした。
星印は、3ッさしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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