樹木希林さんが亡くなりました。余人をもって代えがたい日本映画界の宝のような女優さんでした!寂しい気持ちでいっぱいです。
奇しくもこの作品は、希林世代の人々の精神的青春の謳歌をうたいあげる内容なので、国こそ違え希林さんへの哀悼の意を表する映画として見ることが出来ます!
35年連れ添った夫が退職(警察本部長の役職)し、その功績で<ナイト>の称号を授与され、<レディ>の尊称をもらうサンドラ(イメルダ・スタウントン)は、そのお祝いのパーティーの最中に夫の浮気現場を目撃してしまう。しかも相手は自分の友人。激昂したイメルダは家を飛び出し、ロンドンでひとり暮らしをしている姉ビフ(セリア・イムレー)のアパートに転がり込む。じつは独身主義を貫き富や名誉に無関心で自由奔放な生活を謳歌していたビフと、アッパークラスの生活に満足していたサンドラとは水と油の関係で長年疎遠になっていたのだ。ほかに頼る者がいなかったサンドラはやむにやまれずビフを頼ったものの考え方の違いで、世話になりながら早速口ゲンカの毎日。しかしそこは実の姉妹。ビフはショック状態のサンドラを心配し、仲間たちが集うダンス教室に連れて行き紹介するものの上から目線のサンドラに、仲間たちは辟易してしまうが、ビフは最も信頼するチャーリー(ティモシー・スポール)に世話を頼む。猛烈にしぶしぶ仏頂面しかも上から目線満載のサンドラだったが、しだいに生活は貧しいが心はあったかで本音でつき合うビフの仲間たちの、今を生きる瞬間の人生を謳歌する解き放たれた世界の中で何かが氷解していく。そんな中、チャリティで路上パフォーマンスを計画したジジババ・ダンスがネット上で評判になり、ローマで開催されるダンス大会に招待されることになった。もうその自由な生活にドップリと浸かったサンドラは、トレビの泉である願い事をするものの、夫から許しを乞うメッセージに心は乱れる。窮屈で建て前だけだが夫や娘や孫のいるアッパークラスに帰るか、ビフやチャーリーのいる本音でつき合う自由な心の世界にとどまるか、さあどうするサンドラ・・・。
平均年齢63才以上の出演者が、こんなに若々しく感じる作品も珍しい。肉体は自然の摂理で老いるが、心はいつも青春!たった一回だけの貴重な人生を謳歌する姿に勇気づけられるのだ!サンドラがしだいに若く瑞々しくなっていく様を、イメルダ・スタウントンが鮮やかに演じきっていくのに、心から拍手したくなる佳作となっているのだ。世界中ですすむ高齢化社会の人々に贈るエールいっぱいの内容に乾杯!
ぼくのチケット代は、2400円出してもいい作品でした。
星印は、4ッ半さしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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