法の[絶対主義]を盾に、[悪]に対して裁きの権利を有する司法機関のトップに位置する検察側の峻烈な態度を、エリート検事と新米検事の立場から活写していく社会派ミステリーであり、エリート検事に木村拓哉、新米検事に二宮和也が扮することでも話題になった作品である。
とある金貸しが殺される事件が都内で発生した。
事件を担当する東京地検刑事部の40代のエリート検事の最上(木村拓哉)は、研修を終え刑事部に配属されたばかりの沖野(二宮和也)を指名してコンビを組む。警察の調べで複数の容疑者が浮かびあがる。その中に松倉(酒向芳)という、過去に時効を迎えてしまった未解決殺人事件の重要参考人が入っていた。最上は、その被害者の少女と知り合いだった。その子は最上の東京での学生時代に寮の管理人の娘で、寮生のアイドルであった子だったのだ。最上は沖野に松倉の取り調べを命じるが、沖野は真犯人という確証が得られない。その頃、最上は大学生時代の親友で代議士のである丹野(平岳大)が、収賄容疑の参考人として地検の取り調べを受けることに悩んでいた。その一方で最上は、沖野に複数の容疑者の中から松倉だけに的を絞って、追い詰めていく事を指示する。沖野は自分についている検察事務官の橘(吉高由里子)調査をするも、ふたりとも松倉犯人説に疑問を持ちはじめる。やがて沖野は、検察官の中で最も尊敬し師と仰いでいる最上がその他の容疑者の調査をおざなりに指示し、松倉犯人説に固執する態度に「最上さんは、松倉を犯人に仕立て上げようとしているのではないか?」と考えはじめる。お互いの[正義]を賭けての対立の中、事件は意外な展開を迎えるのだが・・・。
司法の法律による時効、あるいは[正義]の過剰な思いから生まれる冤罪など、検察が抱える矛盾などを織り込みながら、毎日厳しい仕事に従事する検察官の葛藤を描くこの骨太なドラマは、原田監督の思いが強く込められている。だが、その思いをメッセージするのに力が入りすぎて、少し演出が堅くなったような感じのある内容となっていた。そのため、この重層的内容にバラツキが生じて、少し不明瞭なドラマ運びになってしまっていたのが惜しい!
ぼくのチケット代は、2100円出してもいい作品でした。
星印は、3ッさしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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