OBS大分放送
衛藤賢史のシネマ教室

藁の盾

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   2013/05/07

世界三大映画祭のひとつである、カンヌ国際映画祭では過去に数々の日本映画が受賞しているが、このようなサスペンス・エンタティメントな作品が日本映画で受賞エントリーの対象になったのは、はじめての事ではないかと思うし、そういった意味でも話題になった作品である。
ある日、突如として全国紙に掲載された見開きの全面広告に警視庁は慄然とした。
それは「この男を殺してください。御礼として10億円をお支払いします」という前代未聞の広告であった。掲載主は巨億の財産を持つといわれた経済界の超大物で、名指された男は、この男性の幼い孫娘を惨殺して指名手配されている清丸という若者であった。その清丸は身の危険を感じて福岡県警に自首してきた。警視庁は威信を懸けて2名の刑事と加えて要人警備のスペシャリストである銘刈警部補と白岩篤子巡査部長のSPを福岡に派遣し、福岡県警のベテラン刑事の5名体制で東京に護送する命令を下した。幼女を2名惨殺している<人間のクズ>みたいな清丸に対して、その命を守るという<盾>に指名された5名は各々心中に複雑な気持ちを持つが、警察官の任務として清丸の身を守る盾としての福岡から東京までの護送をするしかないのだ。
日本中が注目する護送作戦が開始されたが、未遂に終わっても1億円払うという条項もあり、次から次へと大金に目が眩んだ襲撃者が現れ始める。事態は予想を超える最悪の状況となり、誰が襲撃者か予測のつかない中、5名の精鋭なチームは大護送の車、航空機、新幹線などの輸送手段に襲いかかってくる襲撃者を必死で躱しながら、なぜ我々はこのような反省のカケラもない残忍な犯人の身を守るために、己の命を賭けなければならないのか?という葛藤を心に抱えながらも東京までの護送をつづけていくのだが・・・・・・。
三池監督は、この破天荒なドラマを小気味のいい早いタッチで展開させながら、次から次へと襲いかかる襲撃者と、それを守る側との対決をスリリングに描いていく。
そして守る側の5名の警官の内的事情から犯人に対する、それぞれの思いへの精神的葛藤を並せて描写していくのだが、そこの所のセリフが饒舌すぎて少しもたれる感があるのは否めない。しかし、全体的に骨太なスケール感を出すことには成功している。
善が悪を守る、という発想の中に人間の心の闇、人間の心の弱さを、大きなスケールでのエンタティメントで描こうとする三池監督の心意気を感じる作品である。
ぼくのチケット代は、2,200円出してもいいと思う作品でした。
星印は、3つ差し上げます。

5点満点中3点 2200円

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