それぞれの出来事に応じての謝罪方法の違いを6ケースに分けて話を進めるながら、その出来事がすべてどこかでリンクしていると言うストーリー構成の作り方は、さすがに宮藤官九郎の脚本らしい才気を感じたが、肝心の謝罪方法が無意味にオーバーなので笑いがしぼんでしまう内容になってしまったようだ。
まず、最初は井上真央扮する帰国子女の倉持典子が、車を運転中その筋の人の車に追突したことからはじまる。海外で簡単に謝ってはいけないという教育が浸透している典子はうまく謝罪できずに、誓約書の内容をよく読まないまま判を押してしまい阿部サダヲ扮する東京謝罪センター所長の黒島譲のところに相談することからはじまるこの作品は、黒島の破天荒な謝罪と償いを行うケース1、典子はそのまま黒島の助手となってコンビで以降の事件の謝罪をしていくことになる。
下着メーカーのノー天気な社員の沼田卓也の共同プロジェクト担当者である宇部美咲へのセクハラを謝罪させようとするケース2。大物俳優の南部哲郎と、元妻の大物女優の壇乃はる香の息子が起こした傷害事件での謝罪会見のケース3。一流国際弁護士の箕輪正臣が、留学中にイライラして当時3歳の娘に手をあげてしまったことを成人した娘に謝罪したいというケース4。映画プロデューサーの和田耕作が、大作映画の撮影中にたまたまお忍びで来日中だったマンタン王国の皇太子をエキストラで使ってしまい、マンタン王国の法律である皇族の肖像権侵害の罪で国際問題になり、マンタン王国への謝罪を指南するというケース5。そして、なぜ黒島が謝罪にこだわり、謝罪を正業としたかというケース6。
この6つの異なるケースのそれぞれの事例に応じた異なる謝罪方法を微妙にリンクさせながら披露していくという内容である。
つまり、この作品の売りはそれぞれのケースでどんな謝罪で解決していくのかという、ケース毎の異なる独創的謝罪方法であり、それを観客がどのくらい楽しめるかがキーとならなければ成立しない内容となる。そしてそこが弱いのだ。ケース3の大物俳優のテンヤワンヤはかなり笑えるが、それは大物俳優を演じる高橋克実の演技の賜物であって、謝罪の方法ではないし、ケース5のマンタン王国では、土下座を超える究極の謝罪の見せ場のはずなのに笑うどころか、おふざけの度が過ぎて不愉快でもある。
今回は宮藤の脚本は、才子、才に溺れた感のある内容となってしまっている。
ぼくのチケット代は、1,600円くらいかなと思う作品でした。
星印は、2つを差し上げます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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