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ビフォア・ミッドナイト

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   2014/01/14

衛藤賢史のシネマ教室

ブダペストからパリに向かう列車で出会ったアメリカ人青年ジェシーと、ソルボンヌ大学に学ぶセリーヌは、一瞬でお互いに惹かれあいウィーンで途中下車し、夜通しウィーンの街を歩き、沢山のことを話し合い理解しあっていく『恋人までの距離/ビフォア・サンライズ』(95)。それから9年、作家として新作PRのためにパリに訪れたジェシーの前にセリーヌが姿を現す、パリにいる時間が少ししかないジェシーはセリーヌとパリの街をあてどなく散策しながら、ウィーン以来のふたりがそれぞれ過ごしてきた時間を話す中で、ジェシーが結婚して息子もいるが夫婦間の間が微妙であり、それはセリーヌとの思い出が関係していることが分かる『ビフォア・サンセット』(04)。
出会い、そして話す。長回しの撮影の中でジェシーとセリーヌがあてどなく歩きながら普通の会話、知的な会話、男女間の微妙な会話をキャッチボールしていく、というだけの内容だが、構成の鮮やかさと卓越した台詞のリズムの素晴らしさ、E・ホークとJ・デルビーの自然体の演技によって少しも退屈しない作品となっていた。
そして、それからまた9年目、今度はギリシャを舞台にして、あれから18年目のジェシーとセリーヌの新たな生活を見ることになる。
ジェシーとセリーヌはそれぞれのパートナーと別れて、一緒に生活している。
ふたりの女の子が生まれ、ジェシーの前の妻との息子はもう10代半ばになっている。
友人に招かれて夏の南ペロポネソスにやってきたジェシーとセリーヌは、娘と息子を同行してギリシャで過ごしていたが、息子は一足先にアメリカへ帰るのを空港に送ってくる。
セリーヌはPKO団体で働いているが、仕事の摩擦で少しうんざりしている。ジェシーの作家生活は順調らしいが、ギリシャの休暇を満喫したのはジェシーだけで、セリーヌには少し不満がある。そんなふたりの微妙な立ち位置を中心にして、前2作同様ほとんどジェシーとセリーヌの会話によって綴られるこの作品は、形而上の会話と形而下の会話を絶妙な間(ま)で織り込みながら内容が気持ちのいいテンポで動いていくのだ。
ギリシャ神話、古代ギリシャ文化、ヨーロッパ文化発祥の地ギリシャを背景の舞台に選ぶことによって、ふたりの様々な会話の内容がよりくっきりと知的なものとなり、同時により人間らしい愛を探る、ミッドナイトまでの一日の精神の旅のドラマとなっている。
インテリジェンスを感じる作品である。
ぼくのチケット代は、2,200円を出したい作品です。星印は、4つ半差し上げます。

5点満点中4点 2200円

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