丁度2年前の4月に公開された第一作は、ヤマザキマリさんの原作マンガに程よいアレンジを加えた、いいセンスの内容を持った娯楽映画として、興行成績60億円という大ヒット作品となったのだが、この二作目は前作に比較して少し筋立てが荒くなっているので少し心配である。
時空を超えて21世紀の日本にタイムスリップした、古代ローマのテルマエ技師ルシウスは、日本の奇抜で遊び心あふれる浴場技術の数々を持ち帰りローマ一の人気者となった。しかしハドリアヌス帝の平和路線を快く思わない元老院はコロッセオでのグラディエイターたちの戦いを、より残酷な戦闘にしてローマ市民たちの心を血に飢えさせ領土拡大路線に賛成させようとしていた。だが肝心のグラディエイターたちの負傷者の数が増したのでルシウスを呼び出し、負傷者の傷を癒すことの出来るようなテルマエを作ることを命令する。そんな無理な注文に悩むルシウスはまたもや湯に溺れ日本へとタイムスリップしてしまう。そこでお相撲さんたちに出会ったルシウスは入浴剤や足裏もみなど健康維持に良い技術を、風呂専門雑誌のライターに転向していた真実に出会い教えてもらいローマにタイムスリップして次々と革新的なテルマエを建設していく。
さらにハドリアヌス帝の心身衰弱を助けるための指圧マッサージ、次期皇帝候補ケイオニウスの遠征先での病気のための野外風呂などのアイデアをタイムスリップしては日本で仕入れてくるが、偽物のケイエニウスや元老院の策略のためローマにタイムスリップした真実が魔女とされ大ピンチに陥ってしまう。
今回も日本が世界に誇るお風呂文化の数々、トイレ技術、相撲文化、温泉リゾート施設、そしてラーメン文化などなど盛り沢山の物がローマに紹介され古代ローマ人の喝采を浴びるという、日本人にとって鼻高々の日本文化のすばらしさが登場してくるのは楽しいのだが、あまりに多くの物を入れ込みすぎるので、肝心の縦筋のドラマが稀薄になってしまっている、というより荒っぽくなっているのだ。
ラストはシリーズ化に迷っているような描写になっているので、まだつづくとは断定的に言えないけど、シリーズへの意欲があるならば、縦筋を一作目みたいにキチンとしてそれに日本のお風呂文化のユニークなエピソードを2~3加える、という手法を守ったほうがいいと思う。
阿部寛をはじめ俳優陣はみんなハマっているのでアイデア次第ではいいシリーズになると思う作品である。
ぼくのチケット代は、1,900円ぐらいかなと思う作品でした。星印は、2つ半差し上げます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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