ジェームス・キャメロン監督の「タイタニック」(97)や「アバター」(09)で助監督を勤めたS・クエイルが、師匠譲りの特撮の手腕を存分に発揮した快作である。
アメリカ中西部、コロラド州シルバートン。6月中旬、この町の高校では卒業式が行われようとしていた。教頭のゲイリーの長男ドニーと次男トレイのふたりは、卒業式のビデオを撮る役割をゲイリーから言われていた。
その頃、竜巻のドキュメントを撮る映像チームがこの付近で竜巻の発生を探していた。
チームリーダーのビートは、雇っていた女性気象学者・アリソンの予想で、シルバートンの町を目指して気象装甲車<タイタス>を進めていたが竜巻雲の発生がなく苛立っていた。
しかし、シルバートン高校の卒業式が終了しようとする頃、急速に天候が変化し、空一面に黒雲が密集しはじめ複数の竜巻がシルバートンの町に襲いかかってきた。
テレビなどの公式の予報では、シルバートンの町を予想区域としていなかったので、ビートのチームだけが竜巻の真っただ中にいることになり、勇躍ビートたちは撮影に入る。
しかし、この日の竜巻はまったく想定外のふたつの竜巻が合体した直径3,200メートル・秒速135メートルという、どの観測記録にも残っていない極限のモンスター竜巻だったのだ。
シルバートン高校では校長の指示で高校のシェルターに生徒たちを避難させるが、竜巻のプロであるビートやアリソン博士は撮影を中断して高校に急行し、この超巨大竜巻の威力では地下シェルターも破壊されると忠告し高校のバスに生徒たちを乗せて出来る限り遠くに避難することを勧める。最初は渋っていた校長もアリソン博士の説明に納得し辛くもバスでの脱出に成功する。しかしゲイリーの長男ドニーがガールフレンドと科学工場の撮影に行ったのを知り、ゲイリーは<タイタス>で救助に向かう。
しかし、この超巨大竜巻はもうシルバートンの町を直撃し、猛烈な威力で町や高校を破壊しはじめたのだ。果たしてドニーとガールフレンドを助けることが出来るのか?
まさに超巨大竜巻の威力を体感できる特殊撮影の圧倒的スケールの撮影は、観客であるぼくらも嵐のど真ん中に放り込まれたかのような怖さを感じる作品となっている。
そして「最近は竜巻の発生しないような地域にも来るようになった。この異常気象の原因は人間の環境破壊が起こしたのではないか」という台詞は世界共通の重みを持ち、娯楽作品の域を越えるメッセージ性を感じた作品でもあるのだ。
ぼくのチケット代は、2,300円出してもいいと思う作品でした。
星印は、4つ差し上げます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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