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トウ・ザ・ワンダー

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   2013/09/10

衛藤賢史のシネマ教室

アメリカでもっとも尊敬されている監督のひとりT・マリックは、;78の「天国の日々」から約30年間に6本の作品しか発表していない寡作作家であるが、ハリウッドの有名俳優から出演することを熱望させる芸術系の大御所である。
今回の作品ではT・マリックを師と仰ぐB・アフレックが出演する。
アメリカからフランスにやってきたにーるは、モンサンミシェルでマリーナと出会う。
マリーナは10代で結婚し、ひとり娘のタチアナを産むが、夫に捨てられ絶望的になっていた。そんなマリーナを深く愛したニールは、永遠の愛を信じてマリーナとタチアナを伴いアメリカに帰る。ニールはオクラホマの小さな町に居を構え、環境保護の調査官として働く。しかし同居してもマリーナが前夫と離婚手続きをしていなかったため、ニールと結婚できず、滞在ビザのままなのでビザ期間が過ぎればフランスへ帰国しなければならない。そしてタチアナは英語がよくしゃべれず友達を作ることが出来ないため、いつも一人ぼっちとなりフランスへ帰りたがる。マリーナはニールへの愛が深ければ深いほど、この愛を喪うことを恐れニールの愛を求める。
マリーナは町のカトリック教会の神父のクインターナにニールとの関係を相談する。
その頃、町の人々の世話を親身になって相談に乗ってやり、人々から敬愛されていたクインターナは、信仰上の苦悩を抱えていた。この貧しい環境の人々を救ってくれる神はどこにおわすのか?なぜ神は自分に回答を下さらないのか?
ニールはマリーナの間にも諍いが起こり始める。
永遠の続く愛とは存在するのか?深い愛の裏に潜む憎しみの感情とは?
愛の虚ろいと精神の漂白を描くこの作品を、T・マリックは自然光線を重視した思わず息を飲むような壮大な自然風景の撮影の中で表現しようと試みる。
延々と続く散文詩のような抽象的表現に、キリスト教的思考のモノローグで綴る内容は、日本人にとってこの作品を理解し読み解くことは難解な作業であるが、キリスト教的な思考を取り除けば、愛という虚ろい易い人間感情の普遍的ドラマとして理解すれば、その切なさがよく見える作品となっている。
ぼくのチケット代は、1,900円を出してもいいと思う作品です。
星印は3つ差し上げます。

5点満点中3点 1900円

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