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夢は牛のお医者さん

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   2014/05/20

衛藤賢史のシネマ教室

27年前の昭和62年、新潟県莇平小学校は過疎のため一年生の入学性がゼロという事態になり、児童たちが楽しみにしていた入学式が出来なくなりました。
そこで校長先生は「せめて子どもたちのお友だちに」という発想のもとに3頭の子牛を入学させるというユニークな入学式を挙行しました。
これは当然面白い絵になります。
地元のTeNYテレビ新潟は、このユニークな子牛の入学式を報道しました。
報道記者の時田美昭氏は、この学校と児童たちが気に入り、このニュースを一過性の報道として処理せずに、その後を追いかけはじめたのです。
その中に小学校3年生だった高橋知美さんがいました。
病気がちの子牛の様子を心配し「私がお医者さんになって牛たちの病気を治してあげたい」と思います。時田氏はその知美さんが自分の夢を実現するのを見届ける決心をします。その結晶がこのドキュメント映画となっているのです。
そのため、このドキュメントはテレビ報道として26年間、知美さんを負ったニュースを編集した作品となっており、すごく地味で淡々とした内容となっています。
やらせなど全くなく、ひとりの少女の26年間の夢に向かっての努力を、時田氏は地道に優しいまなざしで付き添っていくのです。
世間的には全く無名の少女の夢、それも華やかな世界への階段を上っていく夢ではなく、田舎で生涯を暮らし牛馬を治療するため難関の国立大学の農学部獣医科を塾などには通わず自力で受験しようとする少女の努力を撮り続けるなど、中央のテレビ局の人など考えもつかない行為を時田氏はやってのけました。
そこがこのドキュメントの凄いところです。
また夢に向かって真一文字に進む高橋知美さんの努力もすごいのです。
地にしっかりと足をつけたひとりの人間の27年間の軌跡を、これまたその努力を信じて追いかけた報道記者の賞賛を度外視した地味に仕事に拍手したい作品です。
こんな作品こそ、本物のドキュメントとして最大の評価をしたいと思います。
校長先生の発案が、ひとりの少女の夢を生む!教育と言う意味を改めて考える、という意味においても必見の作品となっています。!
ぼくのチケット代は、2,500円出してもいいと思う作品でした。
星印は5つ差し上げます。

5点満点中5点 2500円

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