ブラッド・ピットが裏社会のワルたちを手際のいい手段で抹殺する「殺し屋」を演じる、というクライム・アクションだが、スタイリッシュな手法にこだわりすぎて作る側の自己満足に終わってしまったような作品となっている。
ルイジアナ州ニューオリンズの裏社会の賭場が強盗に襲われ、賭場をやむなく閉鎖しなければならなかった組織は怒り心頭に発し凄腕の「殺し屋」ジャッキー・コーガンに犯人の抹殺を依頼する。殺しをビジネスと割り切っているジャッキーの仕事ぶりは、犯人の抹殺を依頼する。殺しをビジネスと割り切っているジャッキーの仕事ぶりは、犯人を見つけたら苦しませずに銃弾一発で処理してしまうクールな男である。
だが、この仕事は組織の怖さをあまり理解していないチンピラたちの仕業という杜撰な計画であったために、返って身内の裏切りなどの疑心暗鬼の考えが、事を複雑にしてしまう。しかしジャッキーは冷静に事件を追及していき、チンピラたちを扇動した黒幕の存在に気づいていく。ジャッキーの凄腕の処理がはじまる…。
という内容なのだが、A・ドミニク監督はストーリーを観客にわかりやすく紹介することよりも、スタイリッシュな手法へのこだわりに重きを置いた演出に拘泥しすぎて、話がよく見えないのだ。
この作品を通して現在のアメリカの経済危機による庶民たちの苦しい生活を訴求したいという重いテーマを内在させようと試みようとしているのは見えるが、97分の中身のほとんどが会話シーン、それも卑猥な会話の羅列だったり、むさ苦しいワルの男たちだけの登場人物設定など、スカッとしたB・ピットのクライム・アクションを期待した観客を気持ちを置き去りにするナルシティックな演出に辟易してしまう内容となっているのである。A・ドミニク監督の前衛的演出を承知しているコアなファンにとっては、期待通りになるかも知れないが、一般のファンにとってはちょっと物足りない映画となってしまったようだ。
ぼくのチケット代は1,700円ぐらいかなと思う作品です。
星印は2つぐらいかなと思います。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
©2024 Oita Broadcasting System, Inc. All Rights Reserved.