バズ・ラーマンの前作『オーストラリア』(08)は、見事な失敗作だったと思うが、今回の作品は彼らしいスタイリッシュな映像美をふんだんに凝らしたものとなっており、ゴージャスな感覚の内容となっている。
<狂乱の20年代>と称される1920年代のアメリカ。一次大戦で疲弊したヨーロッパに代わって、世界の中心にのし上がったアメリカは、好景気に沸き人々は浮かれ騒いでいた。そんな中でも一際目を引く大富豪が現れる。大邸宅で毎晩夜通しで政界、財界、映画人などの著名なゲストを招き超豪華なパーティを開催するジェイ・ギャツビーだ。若くて独身であり、その出自はまったくわからない謎の男である。名門の家出身で名門大学を出ながらウォール街の証券マンであるニックはギャツビーの大邸宅の隣に住んでいるが、そんな世の中の狂乱ぶりに懐疑的でありつつましい生活をしている。そんなニックにギャツビーからパーティの招待状が届く。不審に思いながらもギャツビーに関心を抱くニックはパーティに参加する。ギャツビーは無名のニックに親しく話しかける。世間の噂と違うギャツビーに親しみを覚えたニックは無私の気持ちでギャツビーと友人になっていく。ある日、ギャツビーからニックの従兄妹でワスプの富豪の家に嫁いでいるデイジーを紹介して欲しいと頼まれ、ニックの家で食事をすることにする。傲岸不遜なギャツビーがデイジーの前では緊張してオロオロする態度を見たニックは、ますますギャツビーを好きになるが、実はギャツビーとデイジーは以前からの知り合いだったのだ。その再開を機会にしてギャツビーの人生がしだいに浮き彫りにされていくことになり、ニックがその経過を詳細に見守ることになるのだが・・・・・。
プラダ、ブルックス・ブラザーズが協力した20年代の衣装の数々。ティファニーの提供によるすばらしい宝石類。20年代を再現した屋敷のセット、自動車などため息の出そうなゴージャスな雰囲気は、往年のハリウッドを彷彿させる手作りの大道具、小道具の妙を見せてくれる。それがまた、この作品の魅力ともなっていて、大画面のスクリーンで、そのゴージャスにうっとりと浸って欲しい作品となっているのだ。
R・ラーマンのけれん味ある映像美と、L・ディカプリオのワスプ顔でない容貌が謎の出自の雰囲気を出しており原作の味に近いものとなっていると思う。
ぼくのチケット代は2,100円を出してもいい作品でした。
星印は、3つ差し上げます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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