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終戦のエンペラー

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   2013/07/30

衛藤賢史のシネマ教室

昭和20年8月15日、日本降伏後の天皇の戦争責任を巡っての終戦秘話を扱った作品である。
昭和20年8月30日、マッカーサー元帥が厚木飛行場から日本の地に降り立ち、9月2日ミズーリ艦上で、対連合国降伏文書の調印が行われマッカーサー元帥が調印、この瞬間から日本は連合国の占領下となった。連合国最高司令官マッカーサー元帥は、日本通である軍事秘書官フェラーズ准将に困難な極秘任務を命じた。それは、この戦争における天皇の役割を10日間で探れというものだった。連合国側は当然のように、天皇を戦争責任の中心と考え、裁判にかけようと考えていたが、マッカーサーは、もし天皇を逮捕するような事態になれば日本の中に収拾のつかない反発が起こると考えていたのだ。命令を受けたフェラーズは、行動を開始する。まずは開戦前後の天皇の言動を正確に証言できる要人たちを探さなければならない。急がなければ、名誉を重んじる日本人は覚悟の自決に次々と踏み切る恐れがあったのだ。
日本文化に精通するフェラーズは、近衛、東条、木戸たちと面談し、戦争に対する天皇のお気持ちを聞いていくが、直接的表現を慎む言動に悩まされる。しかし、日本を絶望の淵から助けたいという熱情でフェラーズは動く。そこには、フェラーズの個人的気持ちもあった。大学生の頃、フェラーズはアメリカに留学生してきたアヤという聡明な女性とにおち、アヤの父親の危篤で日本に帰国して以来13年間会えないままになっていたが、片時も忘れたことのない日本人女性がいたのだ。日本中が廃墟と化した中、乏しい情報からアヤの行方を探しながらフェラーズは精力的に調査するが、天皇の無実を証明する資料を出せないとき、天皇は自らの意思でマッカーサーと対面する。マッカーサーは天皇の無垢な精神に感服する。そしてフェローズは調査書に記す「戦争を始めたのは誰かわからない。だが、終わらせたのは天皇の堅い意思であった」と…。
日本人の心を忖度し、情熱を込めて行動するフェローズとマッカーサーを中心に描いていくこの作品は、相互の文化の理解を通してわかり合おうとする当時のデリケートな問題を真摯な描写で史実、フィクションを交えて再現しようとする演出には、日本人として嬉しく嬉しく作品となっている。ただ107分という長さのため、少し駆け足気味の説明になっていたのが気にかかった点である。ぼくのチケット代は、2000円出してもいいと思う作品でした。
星印は、3つ差し上げます。

5点満点中3点 2000円

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