1991年。アフリカのソマリア国で、国際連盟加盟のロビー活動中に内線に巻き込まれた韓国と北朝鮮の大使館員たちの、命を懸けた必死の脱出口を描いた作品です。
1990年、ソウル・オリンピック後、韓国は念願の国連の加盟を目指してアフリカ諸国へのロビー活動に邁進していた。そのうちの一つであるソマリアの首都モガディッシュで、韓国大使のハン(キム・ヨンソク)は、したたかで賄賂が日常的なソマリア政府の上層部を取り込もうと悪戦苦闘していた。一方の北朝鮮は、韓国よりも20年も早くまだ政治的に未開なアフリカ諸国に食い込み、国連加盟にリム大使(ホ・ジュノ)の活動も活発化していた。そのため両国間の妨害工作や情報操作はエスカレート化するさなか、ソマリア政権に不満を持つ反乱軍による戦いが激化して、国家が二分される内戦がはじまる事態が生じた。反乱軍は、モガディッシュの各国大使館を現政権の傀儡と見なして襲ってくる。それは韓国も北朝鮮大使館も同様だった。赴任するに当たって大使館の家族を同行した各国大使館は、自分たちを守るのが精いっぱいの状態に陥った中、北朝鮮大使館が反乱軍の暴徒に襲われ、リム大使ら大使館員やその家族は命からがら逃げ出す。リム大使は大使館員や家族を生き残らせるために絶対に相いれない仲の、辛くも自衛していた韓国大使館に助けを求める決断を下すのだった。果たして、韓国のハン大使は北朝鮮の館員やその家族を受け入れるのか?もし受け入れれば、両国全員生きてソマリアから脱出できるのか?事態は刻一刻と急を要するのだった・・・。
ソマリアで韓国と北朝鮮が角突き合わせるユーモアたっぷりの描写が一転して、内戦で無政府状態に陥り、緊迫した状態へと転換していく流れまで無駄なく描かれていく過程が鮮やかで、見る人を一気に画面に引っ張り込むリュ・スンワン監督の腕の冴えにエールを贈りたい作品でした!ポリティカルな題材を、見る人たちを最後までハラハラドキドキさせながら、登場人物の人間描写のヒューマンな行動などアイデアあふれる骨太のエンターテイメントに仕上げた、監督の剛腕に文句なく拍手を送りたい作品となっていました。
ぼくのチケット代は、2400円出してもいい作品でした。
星印は、4ッ半さしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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