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衛藤賢史のシネマ教室

真夏の方程式

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   2013/07/02

「容疑者Xの献身」で興行成績49億円をたたき出した東野圭吾の原作<ガリレオ>シリーズの湯川が5年ぶりにスクリーンに戻ってきた。
今回は、湯川が研究室を飛び出して、手つかずの美しい海が残っている玻璃ヶ浦という場所で、殺人事件を推理していくという話になっているが、前作同様にセットの造りが丹念であり細部までこだわる作業と言い、海辺の町の風景や海中シーンなどのロケの背景部分の撮影に手抜きが感じられないのがすごく好ましい。
物語は手つかずの美しい海中に海洋資源が眠っているということが判明し、開発計画の説明会に招かれた湯川が宿泊した旅館のもう一人の宿泊客・塚原という男性が変死し、思わぬ形で巻き込まれた湯川がこの事件を推理していくという経糸を軸にして、旅館を経営する川畑夫婦と成美という環境保護活動をしている娘一家の複雑な事情、親の都合でひとりで親戚の川畑家に夏休みに泊まりに来た恭平という小学生と湯川との交情などを横糸として、塚原の変死からはじまる、一見つながりを見せない切ない事件を、夏の美しい海岸部の小さな町を舞台にして、湯川の鋭い推理によって事件を解明していくという内容になっている。
この作品の魅力は、天才的頭脳を持つ物理学者・湯川学の事件を頭の中で解析しながらの切れ味鋭い推理力の力と、湯川の変人ぶりに振り回されながらタフな行動力で事件を追い詰めていく警視庁の女性刑事のコンビのちぐはぐさが面白いのだが、今回の作品では新たなコンビを組む吉高由里子扮する岸谷美沙刑事は、東京から離れた地方での事件なのでバックアップ要因として登場し、中心は杏が扮する川畑成美と、少年の恭平が湯川と絡む重要な登場人物となっている。
西谷監督は、今回もテンポのいい演出で観客の気持ちを最後まで引っ張ることに成功している。これぐらいの仕上がりを見せれば、娯楽作品として合格点であろう。
またこの作品の魅力は何と言っても湯川を演じる福山雅治の肩にかかっているが、クールで変人で、子供嫌いの湯川のはずが、恭平少年を気に入って慣れぬ子供の扱いを頑張るという可愛さをだして、前作とは違う味を見せてくれるのも楽しい。
ヒットする作品になりそうだ。
ぼくのチケット代は2100円出してもよいと思う作品でした。
星印は3つ差し上げます。

5点満点中3点 2100円

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