第一作に比べて格段にスピーディな展開、CG撮影の目を見張る進化の凄さ、そして今や旬の俳優として注目を浴びているB・カンバーバッチの凄味のあるヒール役の演技などで、コアな映画ファンを満足させる出来になっている。
宿敵グリンゴン帝国を倒すための切り札として艦隊士官に登用された謎の人物ジョン・ハリソンが裏切った。恩人のパイク提督をハリソンのテロで失ったカーク船長は、グリンゴンの母星クロノスの宙域に逃亡したハリソンを追跡する。しかし、グリンゴンの軍に追い詰められたカークたちを助けたのはハリソンだった。マーカス提督からハリソンの抹殺を命じられていたが、カークは逮捕して地球で裁判にかけようともどる途中、ハリソンから彼の過去を知らされて驚愕する。そんな中、カークの指揮するUSSエンタープライズ号が突然航行不能に陥ってしまう。その状態を予期していたかのようにカークたちの前に未知の巨大戦艦が現れる。指揮官は何とマーカス提督、ハリソンから事情を聞かされていたカークはハリソンと共闘することにして、この巨大戦艦と戦う覚悟をする。しかし戦艦と観測船の違いからエンタープライズ号は圧倒的不利の状況となり、なぜかこの巨大戦艦について熟知しているハリソンと共に、カークは戦艦に乗り移り、状況を打破しようと図る。しかし、ハリソンの思惑はカークと微妙に違っていた。再び敵対するハリソンとカーク。何とかエンタープライズ号に戻れたが、大破したエンタープライズ号は、もう地球に戻れる余力をなくしていた。カークは仲間を救うため、そして心を分かりあえる仲になったスポックのために最後に残された唯一のしかし危険な賭けを実行しようとする。果たしてカークは船を救うことが出来るのか・・・。
常に冷静で条理に動かされないスポックと衝突しながら、愛のためなら決められた規範をも破ることを厭わないカークの熱い情熱の心を比較させながら、相反するスポックとカークの性格を超えた愛情を中心に据え、ジョン・ハリソンという歪んだ倫理観を持ちながら、その根底にある絶望感を描くこの作品は、愛と友情と裏切りを切なく描いていく。と、同時に凄まじいスケール感を有するCG撮影の魅了が、この作品を壮大なエンタティメントにしており、J・J・エイブラムスの大雑把な演出を苦手としていたぼくも、今回は脱帽をするしかない程の仕上がりを見せている。
ぼくのチケット代は、2,200円を出してもいい作品でした。
星印は、3つ半差し上げます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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