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おしん

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   2013/10/15

衛藤賢史のシネマ教室

おしん役の濱田ここねの愛らしい表情と素直な演技によって、この作品は魅力ある内容となった。
今年はNHKの朝ドラ「あまちゃん」人気が社会現象にまでなったが、その元祖と言っていい朝ドラが1983年に放送された「おしん」であった。明治末期、東北の貧しい寒村に生まれたおしんが、幼くして幸い奉公に出され、数々の艱難辛苦を耐えながら明治・大正・昭和の時代をたくましく生きていく一代記のこのドラマは、平均視聴率52%という驚異的な成績をあげたばかりでなく、アジアや中東など世界63の国・地域で放映され、貧しさに負けず常に向上心を持って生きていく健気なおしんの姿にテレビにかじりつくようにして見る<おしんフィーバー>現象を各国に巻き起こしたのだ。
あれから30年という節目を記念して作られたこの映画版「おしん」は、そうした一代記でなく、幼い少女時代に限定した物語である。
明治40年。貧しい小作農の娘おしんは、凶作のため<口べらし>として小学校にもあがらない7歳の身で最上川の下流にある材木店へ一年間の年季奉公に出されてしまう。その材木店では、早朝から一日中、満足な食事も与えられず、年中頭・つねから罵倒されながら下働きに励むまいにちだったが、店の財布から50銭銅貨がなくなり、つねから盗みの疑いをかけられたおしんは絶望のあまり店を出る。雪の山中で行き倒れのおしんを救ったのは俊作という若い猟師だった。脱走兵の俊作は教養があり、おしんに読み書き・算術・ハーモニカなどを教える教師となる。俊作の身に起こった悲劇により、おしんは家に戻るが、母・ふじのやさしい態度に接した後、再びおしんは酒田の店に奉公に出る。そして、この店の大奥様・くにから利発さを見込まれ懸命に働くおしんだったが…。
テレビの子役・小林綾子の名演技に拮抗する濱田ここねの魅力ある演技が、この少女時代に限定した映画作品を清々しいものにしている。東北の雪の風景が物語全体を包み込むようにして展開する様は、映画という大画面でのメディアならではの迫力を持ち、テレビとはまた一味違う魅力を見せてくれた。また、泉ピン子の存在感ある演技がこの作品に深い余韻を与えてくれている。日本人の勤勉さ、清潔な性格の源風景ここにあり、を示してくれる作品でもある。
ぼくのチケット代は2,200円出してもいい作品でした。
星印は3つ差し上げます。

5点満点中3点 2200円

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