インモラルな内容ということは断片的に流される情報で承知していたが、これほどすごいものとは思わなかった。背中がヒリヒリするような緊張感のある作品であった。カウンセラーと呼ばれる切れ者を自認する弁護士は、己の才覚を過信し、安易に金もうけできると考え危険な裏社会に足を踏み入れる。
相棒は裏社会とも付き合いのある金持ちのライナーと、麻薬の仲介人のウェストリー、インテリジェンスのある男で、カウンセラーにこの裏社会が素人にとっていかに危険であるかをカウンセラーに話し、「自分は危険を察知すると一瞬で姿を消す」と忠告するが、カウンセラーにはローラという知性と洞察力のある恋人がおり、ライナーには元ダンサーで鋭い頭脳を持つが両親の呵責をあまり感じない危険な魅力を発散させているマルキナと言う恋人がついている。
カウンセラーの悪のビジネスは順調に計画が進む中、前に弁護人になった死刑囚の女性から息子の交通事故の世話を頼まれ軽い気持ちで請け負う。しかし、その些細なことと思った世話からカウンセラーの崩壊がはじまっていく。その息子は組織の品物の運び屋であり、砂漠をバイクで疾走中に何者かに殺され、重要な荷物が奪われてしまったのだ。組織はカウンセラーがその強奪に関係ありと見て、裏切り者として報復に乗り出す。その情報をいち早く知ったウェストリーは緊急にカウンセラーを呼び出し、すぐに逃げろと忠告する、身に全く覚えないカウンセラーは、組織に無実を訴えればいいと考える。しかし、ウェストリーは「話せばわかる連中ではない、いったん疑いをかけられたら、もう打つ手はない、お前に関係する者は全て始末される」と言い残し姿を消す。その間、カウンセラーは決断がつかず、何とか自慢の弁舌で解決しようと図るも、悪の法則の怖さをまだ実感してなかったのだ…。
資本主義の金もうけに勝った者がウィナーという虚飾の世界にどっぷりと浸った男たちが、一瞬の油断で奈落の底に落ちていく様を、リドリー・スコットは見事な映像美を背景にして、その容赦なき世界の実態を見る観客の背中をヒリヒリさせるような残酷さで描いていく。その切れ味のいい演出はインモラルな内容でありながら、最後まで目の離せない不思議な魅力に満ちた作品となっているのだ。
ぼくのチケット代は、2,300円出してもいい作品でした。
星印は、4つ差し上げます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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