さすがグルメの国のグルメの映画!女性の心意気を高らかに謡いあげながら、フランスの素朴な家庭料理にこそフランス料理の原点が隠されていることを、そのメニューの数々とともに映画の中で舌づつみする作品となっている。
フランスの田舎で小さなレストランを営むオルタンス・ラボリは、ある日突然フランス政府の公用車でエリーゼ宮に呼び出される。
なんとフランス大統領のプライベート・シェフになってくれと言うのだ。
高級料理だらけの大統領府の食事に辟易していた大統領は、せめてプライベートな食事だけは、子供の頃に親しんでいた素朴な料理を食べたいと、直々にオルタンスをスカウトしたのだ。
この大統領府の厨房は代々男だけで営まれ、窮屈なしきたりでいっぱいの世界。
女性のシェフというだけで白い眼で睨むし、家庭料理などを軽蔑しているので、全員がオルタンスを相手にしない。ただ一人、オルタンス付きを命じられたニコラだけが、オルタンスの料理に共鳴してくれ、良き助手として共に助け合って大統領がよろこびそうな家庭料理を工夫していく。
そのうちにプライベート料理の給仕長がオルタンスの料理の腕に惚れ込み、大統領の料理への感想を情報で知らせてくれはじめる。他人がどう思うかは関係なく、ただ大統領がオルタンスの料理に満足してくれるかを大事にして、ニコラや給仕長と組み、オルタンスの獅子奮迅の活躍がはじまっていく・・・・。
実際にミッテラン大統領のプライベート・シェフにして、女性としてはじめてエリーゼ宮の料理人となったダニエル・デルプシュをモデルにしたこの作品は、後に南極のフランス基地のシェフをも経験した出来事を絡めて、男社会であった料理人世界に臆せずに飛び込み、大統領の子供の頃の心を刺激しながら、大胆な家庭料理作りに邁進していく行動を気持ちのいい流れで見せてくれる作品となっている。
オルタンスを演じるカトリーヌ・フロの颯爽とした演技もさることながら、次々と出てくるフランスの家庭料理の素敵な色彩りは、大統領ならずとも思わず唾を飲むような美味しさを感じること請け合いであり、料理好きの方々は帰ってから早速キッチンへ駆け込みたくなるような心にさせる作品となっているのだ。
ぼくのチケット代は、2,300円出してもいいと思う作品でした。
星印は、4つ差し上げます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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