OBS大分放送
衛藤賢史のシネマ教室

武士の献立

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   2013/12/17

よく練られた脚本と、「釣りバカ日誌」シリーズの朝原監督の丁寧なドラマ作りの手腕によって優れた時代劇の作品となっている。
加賀百万石の江戸屋敷に奉公する春は、亡き父親ゆずりの優れた味覚と料理の腕を持っていた。春が仕えるお貞の方は、加賀藩六代藩主・前田吉徳の側室で春の気性と料理の腕を愛してくれたが、お貞の方の世話で嫁入りしたものの、その率直な気性が裏目となり離縁され、再びお貞の方に仕えるようになっていた。ある日、御台所御用役の舟木伝内の作った料理の素材を当て、望まれて伝内の息子・安信の嫁になる決心をする。春より年下の安信は剣術の腕は相当なものだが、料理はからっきしダメであり、伝内は春に料理指南を頼むのだった。伝内の人柄に好意を抱いた春は承知し、はるばる江戸から金沢まで赴く。
長男の早逝により、急遽舟木家の跡取りとなった安信は、包丁侍と呼称される家柄が大嫌いで勤めをおろそかにしていた。そんな安信にてこずりながら春は懸命に仕える。嫁入りしてすぐに舟木家の親戚方に安信が料理して、その出来を吟味してもらう「饗(あや)の会」があり、安信の料理の不味さに親戚方から非難が出た。いたたまれない春は、二の膳の汁椀を作り直して出してしまう。それは好評であったが、面目をつぶされた安信は怒る。春は安信に料理比べを挑む。結果は安信の負け、そして春は思い切って言う「つまらないお役目と思っているから、つまらない料理しか作れないのではありませんか?」と。その言葉に発心した安信は、春から猛特訓を受けはじめ、みるみる上達する。一安心の春だったが、お貞の方さまも関連する加賀藩のお家騒動に巻き込まれた安信は、改革派の大槻伝蔵に組みし、春の心配は尽きない。そんな折、父・伝内に新藩主の着任祝いの宴の総責任者の命令が下され、伝内は安信を補佐に頼むが安信の返事ははかばかしくない。その安信のただならぬ様子に、春は今や大切な安信のために決死の行動に出てしまう…。
有名な加賀騒動を盛り込みながら、料理人の役柄を負う武士の家庭の生活や町人の出で出戻りの上、夫も年上というハンディを背負いながら前向きに生きようとする春と夫・安信のぎこちない生活が本物の愛に昇華していく様が気持ちのいいユーモアの中に武士の生活の礼儀・作法がきちんと描写され、見事な時代劇だく品となっている。上戸の愛らしい妻ぶり、高良の無骨だが情愛のある夫ぶり、余のほのぼのとした姑ぶり、ひさしぶりに笑い、そして泣く、いい時代劇を見ることができた。
ぼくのチケット代金は、2,400円出してもいいと思う作品でした。
星印は4つ差し上げます。

5点満点中4点 2400円

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