『ロード・オブ・ザ・リング』3部作が、あまりにも素晴らしく、その途方もないスケール感の残像が色濃く残ってしまったので、『ホビット』1部には多少の不満感があったと思う。しかしこの2部に入ってかなり内容が大きく動き始めた。
物語の舞台は『ロード・オブ・ザ・リング』の60年前。
体の小さな種族ホビット族のビルボは、同じく体の小さなドワーフ族の仲間と魔法使いのガンダルフに連れられて、ドワーフ族の王国を奪った邪悪な竜スマウグから王国を取り戻すために困難な旅に出る。
ゴブリンの洞窟で石の巨人の攻撃をうけ、オークの猛攻の中を小さきホビット族とドワーフ族の仲間たちはガンダルフと力を合わせて辛くも脱出するまでの1部に続いて、2部では暗い洞窟を抜け、壮大な風景の地上の旅となる。
武器も持たず戦士でもないビルボに対して違和感を持っていたドワーフ族の王であるトーリンは、温和で臆病なビルボが実は冒険心と柔軟な心で危機的状況を脱する知恵に感謝しはじめる。はなれ山で眠る竜スマウグへと導く秘密の扉は、定められた日にちの定められた時刻に到着しなければオーリンの持つ鍵でもってしても開かない。そこに到着するためには闇の森のエルフの王国を通るしか近道はない。
仲間たちはエルフ王国を密かに抜けようとするが、強敵オークの襲撃や闇の森の巨大人食い蜘蛛などの攻撃を受ける中、エルフ族に捕まってしまう。しかしビルボの知恵で窮地を脱し、はなれ山へと向かう。エルフ族の王子レゴラスとタウリエルも一緒に向かう。
しかし邪悪な竜スマウグの力は想像を絶するものであった・・・。
ニュージーランドの壮大な景観を背景に、次々と襲いかかる危機また危機の大きなスケール感は、やっとこの2部で動きはじめた。
『ロード・オブ・ザ・リング』で有名になったO・ブルームのレゴラス王子も登場し、物語はやっと佳境に突入した。
正義の種族がそれぞれの事情の中で結束して、闇の巨大な力に立ち向かう、というファンタジー・ドラマの定型が少しずつ見えてきた。そして中心は戦士でなく、温和な知恵者であるホビット族ビルボであるのもうれしい!やっとP・ジャクソン映画になったよ。
ぼくのチケット代は2,200円出してもいいと思う作品でした。
星印は3つ差し上げます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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