『ラブ・アクチュアリー』(03)で世界的大ヒットを飛ばした、R・カーティスの3作目の作品である。そしてこの作品を最後に監督から退く意向を発表した。シナリオ作家としての仕事はつづけるようだが、ハートウォーミングな作品では凄い演出才能を発揮していたので映画ファンとしては残念の一言しか言えない!でも理由が家族との時間を大切にしたいので、長い期間の時間を要する監督業はもういいかな!と思ったそうなんでそのやさしい心づかいを考えたら何も言えないよなぁ。
そして、この監督の置き土産作品は、ファンキーでハートウォーミングな家族の愛情を描いた人間賛歌の物語です。
イギリス南西部の美しい浜辺のコーンウォールに住むティムは、両親と妹と伯父のちょっと風変わりな家族と仲良く暮らしている。21才になった日、そんなティムに父親が家の家系の男子だけに21才になったらタイムトラベル能力が生まれることを知らせる。ただしその能力は、自分の記憶の中にある過去へのみ行くことができるだけで、未来や歴史には関われない、という狭い範囲のタイムトラベルであると言うのだ。
半信半疑で父親の言うとおりの方法で試したティムは、それが本当であることを知る。
夏が終わりティムは、弁護士見習いとしてロンドンに行く。そしてそこで運命の女性と出会う。可愛いのにどこか自分を卑下しているレイチェルという女性。ティムも実は自分に今いち自信がない。そのため、少しチグハグな会話となりレイチェルは女性たらしの男と恋に落ちる。ティムはタイムトラベルを使って過去にもどりその男と擦れ違うようにしてレイチェルの愛を勝ち取ることに成功する。
そしてティムはレイチェルに求婚し、コーンウォールに連れて行く。両親も伯父も妹のキットカットも大歓迎。しかし、愛する家族や大事な友人たちに起こる色々な出来事などティムの特殊能力で若干の軌道修正は出来るものの、その範囲は狭い。
そしてティムは気がついていく。大事なことは一日一日、その日を大事に生きていくことの大切さを!それが平凡な毎日であっても、生きていくことの大切さを・・・。
タイムトラベルという、とんでもない素材を使いながらR・カーティス監督は、日常の庶民の生活をやさしいまなざして見守っていく、ユーモア感覚満載のハートフルな世界をここでも具現してきた。悪者が誰も登場せず、山あり谷ありの普通の人々の(と言ってもかなり風変わりな家族になるが)人生模様を、こんなに愛情たっぷりに描いてくれる監督の作劇術にに酔う作品でもあるのだ。
ぼくのチケット代は、2,300円を出したい作品でした。
星印はそのセンスに4つ差し上げます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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