絵本、アニメーション、ミュージカルなどでよく知られているこの作品は、18世紀のフランスで発表された本が原作となっている。世界中の人々がこのファンタジー・ラブロマンス物語に親しんだのは、たぶんディズニー会社のアニメーション『美女と野獣』(1991/監督:ゲイリー・トゥルースディル&カーク・ワイズ)からではないだろうか。
それを本家本元のフランスが実写映画として製作してきた(もっとも1946年にジャン・コクトー監督によりフランスで製作されているのだが)大作である。
昔、大商人の娘として生まれたベルは、兄3人、姉3人に父と何不自由ない生活をしていたが、父の持っていた船が3艘とも難破し無一文になってしまう。金策に走りまわる父が冬の最中遭難し、とある古城にたどりつく。飢えた父は古城にあった食べ物を無断で食べた上、ついそこにあった財宝まで盗ってしまう。そしてベルがお土産に所望したバラの花を一輪手折り帰ろうとした瞬間、獣の姿をした城主に「他の物は見逃すが、自分がいちばん大事にしたバラを盗む者は許さない、その命を貰う」と宣告される。父はせめて家族に一目会ってからしてくれと懇願し自宅に戻ると、ベルが父の身代わりを引き受ける。ベルは、家族が愛した母が自分を生んで亡くなったことを悩んでいたので、父にお土産に頼んだバラが原因だと知り、父まで自分のことで亡くすのは耐えられず身代わりになろうとしたのだ。深い森の中にある古城にひとりでベルは赴く。城主はベルの命を取ろうとせず一緒に暮らすことを命じる。その夜、ベルは全盛期の城の様子と若いプリンセスの夢を見る。翌日、広い領地を散策しているとバラの庭にあった哀しげな若い女性の彫像を発見する。それはベルが夢に見たプリンセスの彫像であった。獣の姿をした領主とプリンセスの彫像に何か秘密を感じたベルは、その謎を解こうと決心するのだが・・・・。
なぜ、領主は醜い獣の姿に変身させられたのか?原作では曖昧にされた原因をいろんな形で想像して絵本やアニメなどが描写されてきたが、この作品ではそのどれとも違う物語を描写してきた。そして、この二重構成の内容によって、絵本やアニメなどが作ったすっきりとしたシンプルな内容よりも構成の複雑さにより、大人の鑑賞に耐え得る切ないラブロマンスの味を賞味できる作品となっている佳作となったと思う。
ベルを演じるレア・セドゥの勝ち気で芯があり、同時に優しさを持つ美女役は魅力的で華を感じる演技であり、これから注目したい女優であった。
ぼくのチケット代は、2,300円出してもいい作品でした。
星印は、4つ差し上げます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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